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金属3Dプリンター出力サービス ー 現在・未来

3DPエキスパートにてバインダージェット方式(Binder Jetting: 結合剤噴射方式)とMEX方式(Material Extrusion: 材料押出積層方式 別名FDM方式)の金属3Dプリンターについてコラムを掲載しましたが、現時点で最大の市場規模を維持しているのはPBF方式(Powder Bed Fusion: 粉末床溶融結合方式)です。PBF方式は導入・維持費用が大きいこともあり導入できる企業はまだ限られ、航空・宇宙産業・医療などのハイエンドな少数部品の製造する分野での活用が進んでいますが、他の産業分野への展開はまだ限定的です。
今回は日本にてPBF方式の金属3Dプリンターを所有して3Dプリンター出力サービスを提供している日本のサービスビューローの方からPBF方式の活用例、課題、今後の展望を伺うことができました。

PBF方式とは

PBF方式はレーザーや電子ビームを、平たんに敷き詰めた金属粉末に照射し溶融・凝固または焼結させて積層造形します。レーザーを使用するタイプはSLM(Selective Laser Melting)、ビームを使用するタイプはEBM(Electron Beam Melting)などと呼ばれます。MEX方式やバインダージェット方式と異なり、金属粉に直接造形するため脱脂・焼結が不要で、造形物が収縮することもなく強度が高いという特徴を持っています。装置の本体価格が高額である上、粉塵爆発対策等の対策設備などの付帯設備や運用環境を整備する必要があり、導入・維持費用が大きい方式です。

PBF方式の特徴を活かした用途

航空・宇宙産業・医療などのハイエンドな少数部品の製造する分野での活用が進むPBF方式ですが、PBF方式登場以前は、従来工法の組み合わせ(鋳造や鍛造、切削などの組み合わせ)で製造されてきました。こうした歴史も実績もある従来工法と入れ替わる形で、PBF方式がハイエンド部品製造の第一線を担うようになってきたのは合理的な理由があります。リードタイムを短縮し、品質を向上させ、コストダウンすら可能にしたのです。なぜ3Dプリンターが従来工法ではなしえなかったQCDの改善を実現できたのでしょうか。その理由は主に3点あげられます。

  • ●難削材での造形
  • ●一体造形による部品点数の削減
  • ●3Dプリンターならではの自由形状の実現

上記3点に関して、詳しく見ていきましょう。

難削材での造形

航空宇宙産業の分野で利用されることが多いチタン合金は、熱に強く非常に軽い上に硬い材料ですが、削ることが難しい難削材の一つと言われています。従来はチタン製の部品を製造しようとする場合、切削加工が用いられてきました。チタンブロックを切削加工機で削りながら形状を作っていくため、非常に加工時間が長くかかっていました。加工時間は部品の価格に大きく影響します。加工に時間がかかるチタン製の部品は、リードタイムも長く、コストも高くなっていました。PBF方式などの3Dプリンターは、チタンのような難削材でも粉末を焼結させることで容易に造形でき、加工時間を大幅に短縮することが可能です。その上、造形時に必要なだけしか材料を消費しません。廃棄する材料も少なく加工時間も短いため、難削材の加工は3Dプリンターが得意とする分野となっています。

一体造形による部品点数の削減

3Dプリンターは金型を用意する必要がないため、金型で造形する際の工法上の制約を意識せず複雑な形状が可能です。自由な形状が可能であるという点を活かして、複数部品を組み立てて構成していた部品を、一体として造形することも可能になります。航空宇宙産業、医療のような、部品ごとに厳格な認証を取得する必要がある用途で用いられる部品は、部品点数を削減することが認証に必要な費用や期間を圧縮する効果もあるため、大きなメリットにつながります。

3Dプリンターならではの自由形状の実現

加工の自由度が高いという事は、設計の自由度を大幅に向上させることができます。肉が抜かれた網状の構造体であるラティス構造を駆使して、部品を軽量化しながら強度を維持するアプローチは、航空宇宙産業で求められる軽量化に大きく貢献できます。ロケットの場合、打ち上げる重量が軽ければ燃料も少なくすみ、ジェットエンジンに求められる性能も抑制できます。通常の工法でラティス構造を実現することは困難だと言われています。ラティス構造は切削や金型で実現費消とするには、あまりにも複雑で加工点が多い形状です。加工点が多いほど加工時間やコストに影響を及ぼします。またそれに比例して加工の難易度も上がっていくでしょう。切削や金型を用いて同等の部品を作ることは、たとえ技術的には可能でも、経済合理性がないため困難なため、3Dプリンターは独自の価値を発揮していると言えるでしょう。

PBF方式の活用分野

最終製品としては製造ロットが少なく精密かつ耐久性能が求められる航空宇宙産業や、レース用自動車、また複雑な切削が困難な超硬工作機械や医療機器構成部品に活用されています。その他自動車分野では強度が求められる機能試作品として、また、生産終了された生産機器の保守部品として活用されています。

品質は経験と蓄積によって作られる

金属3Dプリンターは新しい工法であるがゆえに、適切な品質管理を行うための方法論が、従来工法に比べると発展途上にあると言われています。すでに金属3Dプリンターを使った造形を行っているサービスビューロでは、独自の品質管理手法をもって高い精度と均一な品質で部品製造を行うことができるかもしれませんが、その裏にはさまざまな課題を乗り越えてきた歴史があると思われます。

一例をあげると、日本は先行して金属3Dプリンターに取り組んできた欧米と比べて梅雨などの湿度が高い季節があります。金属の粒径を揃え、形状を揃えても、湿度が影響して滑らかに金属粉を均せないことで品質に影響することがありました。しかしこの原因にたどり着くまでに、考えられるあらゆる要素を繰返し検証してきた経緯がありました。こうした品質に影響する要因を制御する努力や仕組みは大きく品質に影響するため、同じ設計データを支給し、同じ金属3Dプリンターと同じ材料を指定しても、サービスビューロによって仕上がりが異なる場合もあるほどです。

日本の金属3Dプリンター出力サービスの今後

日本で金属3Dプリンターを使った造形サービスを提供しているサービスビューロは複数存在しますが、各社ともに、日本のメーカーや加工業者が3Dプリンター造形に対して、諸外国よりも慎重である点に危機感を募らせています。日本の製造現場では、金型技術や切削技術の従来工法が高い水準で実施されているがゆえに3Dプリンター活用への挑戦が相対的に少ないと感じています。

特に中国や東ヨーロッパでは歴史的背景もあり従来工法にそれほどこだわりはなく、3Dプリンターを使った製造が日に日に増加していると言われています。それにより日々ノウハウを蓄積が進み、日本との間で大きなAM技術格差が生まれる可能性があり、今後の日本の国際競争力に大きく影響すると思います。小さく限定的な取り組みからでも、実際に3Dプリンターを自社でどのように活用できるか3Dプリンター出力サービスを利用して経験して頂き、今後の活用方法を模索して頂きたいと感じています。

まとめ

PBF方式の金属3Dプリンターは独自の強みを持つ工法ですが、万能の工法ではありません。既存工法と組み合わせることで大きな付加価値を部品や製品で実現できる可能性がある工法です。いままで特定の業種に活用がとどまっていたPBF方式金属3Dプリンターの活用ですが、3Dプリンター出力サービスを利用しながら自社で従来工法と組合せて活用して頂くことも、新しい営業機会や高付加価値を創出するモノづくりを実現する一つの手段だと言えるでしょう。

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