技術者が語る 3Dプリンターのいろは

3Dプリンターの肉厚な造形は思わぬ品質トラブルになりやすい(PBF/SLS方式)

本記事の内容が当てはまる造形方式

  • SLS

肉厚なデータってどういうもの?

『肉厚なデータ』とはどういうものを指すのか、下にある"串団子"を模したモデル画像で説明します。 "串"に相当する棒状の箇所は全体から見て細くモデリングされていますが、"団子"に相当する3つの球体は串に比べても大きいサイズでモデリングされています。この球体の部分が今回のテーマである『肉厚なデータ』に相当します。こういったデータは造形時に様々なトラブルを引き起こしやすく、特にPBF/SLS方式(粉末焼結方式)では3Dプリンター装置の故障にも繋がるリスクを含んでいるので注意が必要です。

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焼結時の熱が造形品質に影響するメカニズム

PBF/SLS方式での造形では材料を焼結していく過程で、モデル上に3つある球体に熱が籠りやすい状況が発生します。下図のように溜まった熱が逃げにくい状態になってしまうと、造形物全体の冷却効率が悪くなり仕上がり品質が不安定になる要因となります。表面に凹凸が出来たり、ガサガサに荒れる等の品質トラブルに繋がりやすくなります。
プラスチックの射出成形でも、ヒケやソリといった症状が出ないよう全体の肉厚を均一化することが多いのですが、このPBF/SLS方式でもそういった肉厚への工夫・配慮を事前にしておくことがポイントとなります。

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肉厚が大きい場合はホロー化処理や粉抜きが有効!

どうしても肉厚を小さくできない場合は、肉厚となっている箇所を焼結させず粉のまま残す"ホロー化"という手法があります。モデル表面から一定分の厚さのみを焼結させ、未焼結の箇所を設けることで全体の熱を減らし冷却効率を上げます。この処理を施すことで、前述の面荒れや凹凸などのトラブルを防ぐことができます。

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このホロー化処理の応用で、モデルの一部に粉抜き穴を設けることで軽量化させることも可能です。うっかり体積の大きいモデルを作ってしまった場合でも、あきらめず回避策として検討してみるのも1つかもしれません。

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