SLS方式の造形方向による薄板部再現性について
本記事の内容が当てはまる造形方式
- SLS
造形方向による薄板部の再現性の違い
3Dプリンターの造形において、3Dモデル上で存在していた薄板形状が3Dプリンターで造形した際に、無くなってしまうということがあります。また、その薄板部は造形方向によって再現性に違いが生じるケースがあります。
今回はその一例として、以下図1に示した、左から0.1mm刻みで0.4~0.9mmの厚みの薄板形状を有する3D形状の造形結果(SLS方式の場合)を例に解説します。図2の3Dプリンターで造形した造形物の写真では、水平薄板は全て形状があるのに対し、垂直薄板は0.4mmと0.5mmの形状が消失してしまい再現できていないことがわかります。
なぜ垂直方向の薄板形状は再現できなかったのか
下図は上記の形状を上面から見た模式図です。赤線はレーザが照射される線で、今回の造形の場合はレーザーの太さが約0.5mm(この値は装置や設定によって機差があります)でした。よって0.5mmよりも小さい幅内はレーザーを照射することができません。
水平方向の薄板は特に問題なくレーザーを照射することができます。一方、垂直方向の薄板は0.6mmの幅内はレーザーを照射することができますが、0.5mmの幅内は照射することができません。よって0.5mmの薄板はレーザーが照射されず形状が消失してしまいます。(※リコー3Dプリンター出力サービスでは再現性の余裕度や破損の懸念を考慮して0.8mm以上を推奨しております。)
薄板形状の対応について
上記の通り、薄板の箇所は造形姿勢によっては消失が発生します。よって薄板の箇所はどの方向でも再現可能な寸法以上に修正し、造形姿勢に依らず再現可能な形状にすることを推奨します。
どうしても薄い板形状が必要な場合は、上記の通り造形姿勢を工夫することでより薄い板形状を再現することが可能です。ただし、造形姿勢を変えることでコストや強度、造形時間などの他のパラメーターに影響が出る場合がありますので、多角的な視点でご検討頂くことをお勧めします。