チャーリー、やすらかに...
(【尾灯】イラスト) RICOH Quarterly HeadLine Vol.33 2021 Autumn
先月、世界最強のロックバンド「ローリング・ストーンズ」のドラマー、チャーリー・ワッツが鬼籍に入った。ミック・ジャガー(ボーカル)、キース・リチャーズ(ギター)、ロン・ウッド(同)が悪(ワル)を演じる中、チャーリーだけは英国紳士然とした風貌でドラムを黙々と叩き続けた。派手さは全くないが、チャーリーが叩かなければストーンズという生態系は成立しない。日米で何度か観たライブのうち、19年前のワシントン公演が最高だった。初秋の夜更け、気温が急速に低下…。すると、ドラムセット上で寒そうなチャーリーに、ミックがジャケットをそっと掛ける。人に優しいその姿が、ストーンズの神髄なのだと思う。春先、入院中の弟の見舞いに行くと、いつしかロック談議に。学生時代、彼はドラムで鳴らした。「チャーリーの演奏はタイミングを外しているようだけど、実は完璧なんだよ」と、具合いが悪いのに丁寧に解説してくれた。弟はチャーリーより2カ月早く旅立ち、今は天空からドラムを叩く音が聞こえてくる。2人ともありがとう、やすらかに…(N)