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ウサギとカメ

ウサギとカメ <br />
(【尾灯】写真) RICOH Quarterly HeadLine Vol.34 2022 Winter
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 先日、講演で久しぶりに福井市を訪れた。朝、「ぶお~ん」という独特のモーター音が聞こえてくる。通勤・通学客を運ぶ路面電車(福井鉄道)が元気でうれしくなった。軽自動車に追い抜かれていくその姿は、スピードだけでない公共交通機関の使命を教えてくれる。人口減少が加速し、しかもクルマ社会の地方都市で路面電車を維持するのは容易でない。福井鉄道もかつて経営危機に陥ったが、地元の市民や自治体、商工会議所などから支援を受け、何とか存続している。2024年春、この素敵な街に北陸新幹線(JR西日本)が開通する。講演前に名刺交換した栗田幸雄・元福井県知事は「実現までに50年かかりました」と、ほっとしたように笑みを浮かべた。新幹線と路面電車のスピードはウサギとカメほど違うが、その共存が化学反応を起こし、この街には新たな息吹が注がれるはずだ。地球温暖化が深刻になり、エネルギー効率の良い鉄道の役割は世界的に見直されている。その一方でコロナ禍が鉄道会社の経営を圧迫するが、未来を見据えて踏ん張ってほしい。(N)
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ウサギとカメ
(【尾灯】写真) RICOH Quarterly HeadLine Vol.34 2022 Winter

 先日、講演で久しぶりに福井市を訪れた。朝、「ぶお~ん」という独特のモーター音が聞こえてくる。通勤・通学客を運ぶ路面電車(福井鉄道)が元気でうれしくなった。軽自動車に追い抜かれていくその姿は、スピードだけでない公共交通機関の使命を教えてくれる。人口減少が加速し、しかもクルマ社会の地方都市で路面電車を維持するのは容易でない。福井鉄道もかつて経営危機に陥ったが、地元の市民や自治体、商工会議所などから支援を受け、何とか存続している。2024年春、この素敵な街に北陸新幹線(JR西日本)が開通する。講演前に名刺交換した栗田幸雄・元福井県知事は「実現までに50年かかりました」と、ほっとしたように笑みを浮かべた。新幹線と路面電車のスピードはウサギとカメほど違うが、その共存が化学反応を起こし、この街には新たな息吹が注がれるはずだ。地球温暖化が深刻になり、エネルギー効率の良い鉄道の役割は世界的に見直されている。その一方でコロナ禍が鉄道会社の経営を圧迫するが、未来を見据えて踏ん張ってほしい。(N)