2025年04月

インタビュー「デジタルサービスで変わる研究・産業・医療の未来」

リアルな体験が新たなアイデアを生み出し、ビジネス創出に繋がる共創へと繋がっていく。デジタルサービスによって変える研究室や医療現場の未来とは

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リコーのデジタルサービスと顧客のアイデアの融合によって価値を生む知的創造空間、RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE TOKYORICOH BIL TOKYO)。このたび、研究用機器や科学機器等の総合商社であるアズワン株式会社のRICOH BIL TOKYO来場をキッカケに、同社が展開する中之島クロスラボを軸とした共創プロジェクトが進んでいます。

本取り組みでは、中之島クロスラボのバーチャルツアーを可能にしただけでなく、施設内の設備配置シミュレーションや機材管理をデジタル上で行える「デジタルツインソリューション」の活用により、新たなビジネス創出にも発展する共創へと繋がっています。

そこで今回は、RICOH BIL TOKYOに来場いただいた背景から実際の共創プロセスに至るまで、アズワン 執行役員 CDIO 最高デジタルイノベーション責任者 DX推進本部長 福田 智宏様、上席執行役員 エグゼクティブアドバイザー 専門事業本部 金野 徹様、専門事業本部 研究設備グループ長 雄城 文洋様、そして本取り組みを担当したRICOH BIL TOKYO ビジネスデザイナー 柴田 有登、カスタマーサクセス 清玄寺 隆司、エンタープライズ事業本部 福田 誠司にインタビューを行いました。

医療や研究のクローズドな世界を変えていく。共創・空間デザインをスローガンに掲げる「中之島クロスラボ」とは

リコー柴田:あらためて中之島クロスラボがどういったものなのか、またRICOH BIL TOKYOにご来場いただいた背景を教えていただけますか?

金野様:Nakanoshima Qrossは、2019年に大阪府と21社の企業・病院が参画して誕生した一般財団法人「未来医療推進機構」が設立した施設です。より具体的に申しますと「未来医療推進機構」は、医療機関や研究機関・公的機関・スタートアップ支援機関が参画しており、民間主導の産学医連携を実践し再生医療の産業化と未来医療を支える人材育成を推進する場として設立した、未来医療国際拠点がこのNakanoshima Qrossです。

そして当社では細胞培養関連の人材育成をミッションのひとつとして掲げており、CPCと呼ばれる細胞培養加工施設を備えた「アズワン中之島クロスラボ」(以下、中之島クロスラボ)を2024年夏、Nakanoshima Qrossの当社区画内に開設いたしました。

中之島クロスラボは研究者にラボを提供している他、情報発信基地としても重要な拠点です。たとえば中之島クロスラボでは当社が独自開発した新ラボラトリーファニチャーブランドである「enoosa(イノーサ)」をご見学頂きながら、これからのラボ空間デザインをご提案し、幅広くお客様と連携していく場所として活用しております。

福田様:アズワンとして活動の幅を広げていく上で、オープンイノベーション、すなわち共創というのがキーワードとしてありました。また、中之島クロスラボが掲げるスローガンが「共創」と「空間デザイン」であり、まさにRICOH BIL TOKYOの目指すところと通ずる部分があると感じ、一緒に何かできないかと思ったことが最初のキッカケでした。

そして、現場課題を理解しているメンバーがRICOH BIL TOKYOを訪れなければ意味がないと感じ、初回から私だけでなく、金野や雄城と一緒に訪問させていただき、いろいろと対話させていただきました。

アズワン 執行役員 CDIO 最高デジタルイノベーション責任者
DX推進本部長 福田 智宏様

リコー清玄寺:御社では研究・産業・医療機関向けの機材管理ソフトを提供されていますが、ソフト導入時は図面をもとに設備や機材の場所を1つずつ登録する必要があり、機材の棚卸しに多くの工数が発生していることが課題としてあると伺いました。

そうした課題に対して、我々が提供するデジタルツインソリューションが活用できそうだという発想が生まれ、今回のプロジェクトがスタートしていきました。

デジタルツインは、施設をデジタル上に落とし込むソリューションで、機器や設備の資産情報を空間データに紐づけることで、施設にいなくてもまるでその場にいるかのように資産管理を行うことが可能になります。

また、中之島クロスラボ自体もスタートしたばかりであったため、デジタルツインを用いてバーチャルツアーを行うなど、中之島クロスラボをどう盛り上げていくかといった発想も生まれていきました。

あらためて、RICOH BIL TOKYOにご来場いただいた際の所感としては、いかがでしたか?

金野様:RICOH BIL TOKYOを訪れてまず感じたのが、無限の可能性が広がっているということです。まず、このRICOH BIL TOKYOに入ってすぐに、真っ白な空間に映像や音での演出(次世代会議空間 RICOH PRISM)があり、こんなことができるのかと驚きでした。

特に研究や医療の現場というのはアカデミックでクローズドな世界。そうした世界にリコーの技術を取り入れることができれば、素晴らしい環境がつくれるだろうと思えました。

また、デジタルツインソリューションによって、資産管理のビジネスを効率化できることはもちろん、研究所を移設する際の設計や施工にも活用できたりと、本当に様々なビジネスの可能性を感じさせられました。

雄城様:もともと当社は中之島クロスラボ以外にもラボがあり、コロナ禍でリアルに来場できない方向けに、デジタル上でラボを見学するツアーを行っていました。そのため、はじめはデジタルツインソリューションに関しても、そうしたことができるのだろうといったイメージしかありませんでした。

しかし実際にお話を伺うと、デジタル上でAIと対話ができたり、デジタル上で設備を移動させてレイアウト設計ができたり、そして資産管理にも活用できたりと、どこから手をつけていいのか悩むくらい多くのソリューションに応用できることが分かり、多くの可能性が広がっていくのを感じました。

福田様:バーチャルな空間にリアルを再現することで、動画であったり、説明であったりと様々な情報をその空間に埋め込むことができます。

そして機器の管理も、たとえば移設先にいまの機器が収まるのか、どういったレイアウトにするのかといったこともバーチャルな空間で確認できる―― そうしたことをただ言葉で説明されてもイメージがつきづらいのですが、実際にRICOH BIL TOKYO自体もデジタルツイン化されており、什器管理などもリアルに体感できたことで、デジタルツインソリューションの将来性の理解に繋がっていきました。

デジタル技術により人々の創造性を引き出す次世代会議空間「RICOH PRISM

ただリアル空間を置き換えただけではない、多様な可能性を秘めているのがデジタルツインソリューションだと実感

リコー福田:デジタルツインソリューションは、アズワン様のお客様向けに移設プロジェクト等でレイアウトをシミュレーションしたり、資産管理をしたりとお客様のための使い方はもちろん、中之島クロスラボ自体をデジタルツイン化して、バーチャルツアーを行うなど、PRとしても活用いただけます。

そのため、たとえば新しい研究者をリクルートする際もデジタル上で中之島クロスラボを案内するといったことができるわけですが、あらためて、中之島クロスラボがデジタルツイン化することの価値というのは、どういった点に感じていらっしゃいますか?

リコージャパン エンタープライズ事業本部 福田 誠司

金野様:昨今はただ研究室をつくりました、というだけでは世界から注目を集められません。そのため、研究を行うスタートアップは、投資家に対して好印象を与えたい、ブランドイメージを高めたいといったニーズがあり、どのラボも「どう見せるか」の部分に課題を抱えています。

そこで中之島クロスラボでは、デジタルツインソリューションを用いることで、来場せずとも多くの方に見せることができるということ自体が価値のひとつ。さらに普段であれば防護服を着用しなければ入れないところもデジタル上であれば入れますし、デジタル上で機器を移動させたりと、ただラボの写真だけをお見せするのとは違った体験を提供できます。

また、今後はAI連携によって対話できるデジタル空間の実装も予定しており、ただリアルをデジタルの空間に置き換えただけではない、デジタルツイン上だからこそできることが多くあるということが価値であると感じています。

アズワン 上席執行役員 エグゼクティブアドバイザー 専門事業本部 金野 徹様

リコー柴田:これまでの共創プロセスを振り返り、RICOH BIL TOKYOはどういった場所だと感じられていますか?

福田様:もしもRICOH BIL TOKYOという場がなく、ただデジタルツインソリューションはどうかと提案をいただいていたとしたら、ピンとこなかったと思います。それくらい、実際に目で見て体験するということは情報量が異なり、理解度も異なるわけです。

また、御社と私たちでは事業ドメインが異なるため、話す言葉も異なってきます。そうしたときに、実際のモノというのが共通言語として活きてくるため、RICOH BIL TOKYOドメインの異なる人同士が交わり、共創する上で最適な場所だと感じました。

そしてリコーの皆さんにも中之島クロスラボに来ていただきましたが、実際のラボや細胞培養の講習する場所などをリアルに見ていただいたことで、より具体的なイメージを持って対話をさせていただけました。

そういった見ないと伝わらないことというのが実際は多くあると思っており、あらためてデジタルツインソリューションの意味というのを感じさせられました。

リコー柴田:RICOH BIL TOKYOとしても、お客様に来場いただくということを非常に大切にしております。そしてこの1年間で約400社もの企業の方々に来場いただきましたが、実際に皆さまに見て体感いただき、その上で対話を進めていくことが共創プロセスにおいて重要だと考えています。

RICOH BIL TOKYO ビジネスデザイナー 柴田 有登

すでに見込み案件も生まれている。RICOH BIL TOKYOとの共創によって、目指すラボの完成形に近づくことができている

リコー清玄寺:今回、中之島クロスラボのデジタルツイン化を実装しましたが、対話を通じて「こういった使い方もできるのか」と我々が教えてもらうこともあり、まさに共創プロジェクトだと実感しています。

そして今後はデジタルツイン上でAI連携による登録された設備情報とのチャット・対話機能、また搬入出の経路シミュレーションなど、引き続き新たな価値創造に取り組んでいければと思います。

また、今回は御社の展示会に参加させていただき、アズワン様のサービスとしてデジタルツインソリューションを紹介させていただきました。展示会に来場されたお客様からは「自社の資産管理に活用したい」「装置の配置シミュレーションに使いたい」などのお声をいただくことができました。

実際にデジタルツインソリューションを御社のサービスに組み込むことで、より御社の利益創出も共創させていただければ嬉しく思います。現状、中之島クロスラボのデジタルツイン化によって、どういった反響が生まれていますか?

リコー カスタマーサクセス 清玄寺 隆司

雄城様:中之島クロスラボには、オープンしてから約7ヶ月で700名以上の方に実際にご覧いただいており、非常に多くの方に興味を持っていただけていると実感しています。

そしてデジタルツイン上でのシミュレーションや資産管理はニーズがあるだろうと思っていましたが、実際に展示会などで生の声を伺い、ニーズがあるということが確信に繋がっていきました。すでに実案件に繋がる見込みも生まれており、とても嬉しく思っています。

リコー福田:案件に繋がっているというのは、私たちとしても非常に嬉しく思います。そしてデジタルツインソリューション以外にも様々なアイデアをいただいていますので、引き続きご支援させていただければと思いますし、デジタルツインソリューション自体もアップデートしていき、御社の成長に寄与できればと思っています。最後に、これまでを振り返ってのご感想をお聞かせください。

雄城様:RICOH BIL TOKYOという非日常の環境だからこそアイデアが出やすいですし、様々なソリューションをリアルに見て体感することで、こういった使い方もできそうだとまた新しいアイデアが生まれていったりと、RICOH BIL TOKYOからは様々な刺激をいただきました。

特に私たちはラボにおける機能美を大切にしており、ラボラトリーファニチャーブランドの「enoosa」含め、中之島クロスラボではデザインのチカラで一般的な研究室のイメージを覆したいという思いを込めた内装設計も取り入れています。

たとえば一般的な細胞培養加工室は壁一面真っ白で、そうした部屋に18時間もこもって研究を行うというのは、メンタルヘルスの観点からも改善が必要だと感じています。そこで、PRISMで見せていただいたプロジェクションマッピングによる演出を取り入れるなど、RICOH BIL TOKYOとの共創によって私たちが目指すラボの完成形に近づけるのではと考えています。

アズワン 専門事業本部 グループ長 雄城 文洋様

福田様:リコーは多くのソリューションをお持ちですし、私たちも研究・産業・医療系商材から建物の設計まで幅広い事業を展開しているため、それらがどう組み合わさり、共創へと繋がっていくのかはじめはわかっていませんでした。

しかし、RICOH BIL TOKYOの皆さんがコンシェルジュのような役割を担い、私たちが抱える課題感に対して解決策をご提案いただけたり、エッセンスをまとめていただけたことで今回の共創が実現できたと思っています。

そして、これまでも予想していなかったことばかり起きているので、今後もどういった化学反応が生まれるのだろうかという期待感でいっぱいです。何が起こるのか、非常に楽しみにしています。

金野様:当社では研究機関や医療機関だけでなく、ホテルやレストランのコンサルティング事業も展開しています。
そのため、今回のデジタルツインソリューションは、あらゆるシーンに使えると感じていますし、営業の生産性を向上させる上でもデジタルツインソリューションは非常に価値あるものだと思っています。RICOH BIL TOKYOと共創プロジェクトに参画でき、本当に嬉しく思っています、ありがとうございました。

リコー柴田:デジタルツインソリューションだけでなく、細胞培養加工室をPRISM化したり、密閉された空間でどう外と繋がるかなど、対話を通じて様々なアイデアを出していくことができましたが、アズワン様が目指すもの、またリコーとして目指すものに共通点が多く、同じ想いを共有してこうして共創プロジェクトを実現できたことに感謝しています。

そして、今後もご一緒できることがたくさんあり、非常に楽しみに感じています。あらためて、本日はありがとうございました。

お客様情報

アズワン株式会社 様
詳しい情報は、こちらをご覧ください。
https://www.as-1.co.jp/

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