2021年04月02日
新型ウイルス
常任参与
稲葉 延雄
新型コロナウイルスの感染拡大抑止の切り札として、ワクチン投与が世界中で始まった。これで今回のパンデミック(世界的大流行)が本当に収まるのか、なお予断を許さない。仮にある程度感染が収まり始めたら、人々は以前のようにオフィスに戻ってくるのであろうか。
人々の接触機会を減らし感染を抑止する重要な手立てとして、多くの主要国ではオフィスに通勤する代わりに在宅勤務が強く推奨された。既にオフィス業務はパソコン中心になっていたので、メールやチャットシステム、オンライン会議システムなどを駆使すれば、すぐにでも在宅勤務が始められる状況にあったからだ。
この在宅勤務という形態は、ポストコロナのニューノーマルにおいてもある程度は残るのではないか。そういう見方が最近強まっている。実際、週に3日出勤・2日在宅といった「最適構成」をめぐり、企業経営者と従業員の間で模索が始まっている。
感染対策としてスタートした在宅勤務だが、多くの従業員にとって思いのほか快適なため、もはや週5日も憂鬱(ゆううつ)な通勤に大事な時間を費やすことは耐えられないだろう。まして介護や育児を抱える従業員は、在宅勤務が可能にした柔軟な勤務体制の有用性を実感している。
もっとも、オフィス勤務者と在宅勤務者が混在するオンライン会議においては、なお多くの不具合や使いにくさが指摘される。回線容量の不足で音声が途切れたり、画像が歪んだりは日常茶飯事だ。また、従来の対面会議では可能だった会議後の意識合わせや、細かい了解事項の確認がうまくできないという不満も根強い。
一方、感染拡大が完全に収まることは考えにくい以上、オフィス勤務を嫌がる従業員も一定数は残存するだろうし、逆に在宅勤務をしたくても業務上の制約からできないエッセンシャルワーカーのような人々も存在する。
いずれにせよ、企業経営者はオフィス出社を強要することなく、業務特性に応じて従業員が働き方を柔軟に選択できるよう、執務環境のさらなる整備に努める必要がある。オフィス業務支援サービスを主たるビジネスとするリコーグループにとっても、デジタル技術を活用した新たなビジネス機器やツール、さらにはそれらを統合するシステムの開発・供給を通じ、より働きやすい環境づくりを支援していかねばならない。
稲葉 延雄