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長期休校、家庭内教育にふさわしい教材は?

=教師向け手引き、遠隔ホームルーム…お役立ちサイトを紹介=

2020年05月13日

新型ウイルス

研究員
米村 大介

 新型コロナウイルス感染症対策として、学校や幼稚園の臨時休校が長期化している。筆者の家庭には小学校3年生を筆頭に3人の子どもがおり、家庭での学習に頭を悩ます。そこでインターネットで調べて実践した中で、読者のお役に立ちそうなサイトをいくつか紹介したい。

写真長期休校、家庭内学習が不可欠に(イメージ写真)
(写真)筆者

 文部科学省が作成した「子供の学び応援サイト」は、学年や教科ごとに役に立つようなサイトを集めており、実用的な価値が高い。例えば、親が普段目にすることのない「教師向け手引き」などにアクセス可能であり、学校の先生の視線で子どもに勉強を教えることもできそうだ。

図表

 このような家庭教育向けの教材充実はありがたいが、休校長期化に伴い、教材以外に家庭と学校の違いが気になり始めた。まずは生活のリズムだ。学校であれば、授業、給食、遊びに充てる時間の使い方がはっきりしている。しかしながら、家庭ではどうしてもその使い方にメリハリをつけることが難しい。

 家庭でもリズムを得るためには、どうしたらよいのか。答えの1つが、遠隔会議システムを活用するホームルームだ。参加したい親子は主催するNPOなどに登録。子どもは朝、先生役と仲間にその日に行う活動の目標を宣言、夕に結果を報告する。そうすることで、子どもに活動上の迷いがなくなる。また、夕方の報告により、子どもは自分の時間の使い方の問題点に気づき、生活のリズムを保ちやすくなる。関心のある方は、「会議システム ホームルーム」で検索をすると、役立ちそうな情報を入手できるだろう。

 別の視点からの家庭学習の課題は「孤立」だ。突然学校に行けなくなった子供の面倒を、親がずっとみられる家庭はそう多くない。孤立は単に寂しいだけでなく、心理学でいうところの「社会的促進」が失われることが大きな問題だ。

 社会的促進とは、米心理学者ゴードン・オルポートが提唱した概念である。そばに他者がいるだけで、作業の効率が高まる現象を指す。家庭で学習をするよりも、自習室や図書館、喫茶店のほうが集中できるという人がいる。まさにこれが社会的促進なのだ。

 今、家から外出しにくくなっても、何とか社会的促進を確保しようという取り組みがある。その代表的な例が「一緒に勉強する動画」である。その特徴は「人がただ勉強しているだけの光景」を延々と映し出す。それだけで何も起きない。ところが、筆者がこの動画をそばにおいて仕事に取り組むと、集中力が増したような気がした。興味がある方は「#StudyWithMe」で動画サイトを検索していただきたい。

 ここまで学校と比較しながら、家庭教育の課題と解決のヒントを紹介した。もちろん、家庭教育にはプラス面も多い。通学時間がなくなるし、動画授業なら受講時間も自由である。授業で学んだことを、即その場でテスト・採点してくれるサービスも登場した。

 コロナショックが続く中で、筆者が家庭内教育のプラス面を強く感じたのはコンテンツの柔軟性である。例えば、大学レベルの教育が遠隔かつ低価格で受けられるMOOCというジャンルの教育サイトが、近年世界中で増えている。

 今、こうしたサイトには、新型コロナウイルスに関わる、多数の教育メニューが登場している。一般的な知識だけでなく、疫学や診断方法、治療施設の設計方法、心の健康を保つ...。実にさまざまなコンテンツがある。興味がある方は「MOOC コロナウイルス」や「MOOC COVID-19」で検索すると、ユニークな授業にきっと出会えるはずだ。

 人間は環境へ適応することで繁栄してきた生物。社会環境、大げさに言えばパラダイムが変化する予感が強まる中、子どもの学び方や学ぶ内容も変化しなければいけない。世界がニューノーマル(新常態)に向けて試行錯誤する中、デジタル技術とうまく付き合いながら、未来に貢献できる子どもを社会全体で育てていきたい。

米村 大介

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