2024年05月08日
尾灯
編集長
舟橋 良治
日本で自動運転バスが庶民の足として使われ始め、その様子を新西誠人・客員主任研究員が「町に溶け込む『未来の交通』~新技術普及の試金石に~」でリポートしている。自動運転のバスやトラック、乗用車は、AI(人工知能)技術の進展により開発速度が一段と加速するのは間違いない。AIは移動手段に限らず、さまざまな場面で欠かせなくなっており、今後の経済発展の鍵を握る。
では、AIはどこまで進化するのか。自律的なAIが人間を上回る知性を持つ時点であるシンギュラリティー(技術的特異点)をめぐる論争が盛んに行われている。
では、シンギュラリティーは実現するのか。数年前、ある脳科学者に聞いたことがある。その答えがとても興味深かった。
今のAIはいわば超高性能の計算機。新たなアイデアを生まない。人間の知性を上回るには創造性を持つ必要があり、そのためには脳の機能をそのまま再現しなくてはならないという。しかし、現在の素材で脳を構築すると熱を持ちすぎてメルトダウン(溶融)するのだとか。
「では、シンギュラリティーが幻なら、私たちはどうすれば...」と聞くと、その脳科学者は「簡単ですよ」とほほ笑みながら話してくれた。創造性と無限の可能性に溢(あふ)れる人間の赤ちゃんが日々生まれていることに目を向けるべきだという。なるほど。この時、妙に納得したのを覚えている。
舟橋 良治