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自由の「女神」が水没する!?

=巨大都市に忍び寄る温暖化の危機=

2019年06月05日

地球環境

研究員
亀田 裕子

 「パンドラの箱」を開けてしまった―。先日、自宅の大掃除をしていた時に出てきた段ボール箱。中には、各地の旅行先で撮った写真のアルバムが入っていた。こういった過去にまつわるものを、片付け中に見つけて良いことは一つもない。「見ているヒマはない...」と思いつつ、開けたが最後。当時に思いを馳せて小一時間が経過...。お決まりのパターンである。片付けどころではない。

 「懐かしい...」―。思わずつぶやいて、1枚の写真をしみじみと眺めてしまった。米国の「自由の女神」を写したものだった。10年ほど前の冬のことだ。寒い中、フェリーに乗りリバティ島に向かったのを思い出す。自由の女神が見えてくると、やはり感動したものだ。雲一つない青空を背景に、足元から写した自由の女神。米国民主主義の象徴として目にする機会は多かったが、実物を見ると「本当にあるんだ!」「私は今、自由の国アメリカにいるんだ!」と強く感じたのを覚えている。

20190605_02.jpg自由の女神

 そんな米国のシンボルが大型ハリケーン「サンディ」による深刻な被害を受けたのは2012年10月のことだ。当時、リバティ島は75%程度が浸水。さらに、かつての移民たちに「夢の国」の入口だったエリス島は100%が浸水。その後、自由の女神は8カ月間修復のために閉鎖された。影響はこれにとどまらず、ニューヨークやニュージャージー両州の沿岸部が高さ3メートルの高潮に見舞われ、ニューヨーク州の被害総額だけでも約4兆7000億円に上ったといわれている。巨大経済都市が被った損失は計り知れない。

 その損失の背後には地球温暖化が存在する。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の「1.5℃特別報告書」によると、地球温暖化がもたらす気候・気象の極端現象として「強い降水現象」が挙げられている。世界全体で、強い降水現象の頻度や強度、量が増加すると予測されているのだ。また、地球温暖化による海面水位の上昇もリスクとして指摘される。

sdg_icon_13_ja.png 実際、国連教育科学文化機関(UNESCO)と国連環境プログラム(UNEP)などによって作成されたレポート「World Heritage and Tourism in a Changing Climate」には、近い将来気候変動により危機に瀕(ひん)する可能性のある世界遺産の一例として、自由の女神が報告されている。これは世界遺産に限った話ではなく、気候変動を食い止めない限り、海に面した大都市は同様の危機に陥るかもしれない。

 ニューヨーク市も手をこまねいているわけではない。2019年3月にマンハッタンの一部地域を気候変動による洪水から保護するため、約560億円を投資すると発表した。洪水リスクの高い地域に恒久的な防護壁を建設するというものだ。マンハッタン南部の保護に必要な金額は推定約1兆2000億円といわれており、今回の投資はほんの一部にすぎない。それでも、いよいよ気候変動による回避不能な影響に備えるべく動き始めたといえるだろう。

 もちろんニューヨーク市は、海面上昇から都市を守る問題が解決すれば、終わりだと考えているわけではない。

20190605_01.jpgエンパイア・ステート・ビルから見渡すマンハッタン

 実はサンディの被害を受ける以前、2007年に「PlaNYC」という長期計画を策定している。2030年を目標年次として、住宅や水道、交通、エネルギー、廃棄物、気候変動など、都市が抱える課題とその解決策の方向性を示したものだ。ニューヨーク市は温室効果ガス排出量を2030年までに30%削減(2005年比)するという野心的な目標を設定。既に2012年までに半分超の16%削減を達成した。

 しかし、こうした活動によって気候変動を食い止めるには、一都市だけでは限界がある。全世界で取り組まないと、手遅れになるだろう。本来、周囲を海で囲まれた島国の日本は、気候変動に対してもっと深刻に考えなければならないはず。ニューヨークの災禍は決して「対岸の火事」ではない。時には日本がリーダーシップをとり、率先して地球規模の対策に伴うコストを負担するなど範を示していくことも求められるだろう。

 「水面から顔を出す、自由の女神」などだれも見たくないはずだ。各国の利害は一致しなくとも、まずはこうした思いを共有することを行動に結び付けていきたい。

(写真)筆者

亀田 裕子

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