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廃材に息吹を与えると...

=「潤滑油」が職場の「空気」を変える!=

2019年06月11日

地球環境

研究員
西脇 祐介

 先日、とある依頼を受けてリコー社内の打ち合わせに向かった。

 場所は新横浜事業所にある作業スペース「つくるーむ」。リコーの営業担当からお客様の依頼を受けて試作品を作ったり、社内外とビジネスの相談ができたりする空間だ。社内の人間が部署を越えて集うことができる。ここに足を踏み入れると、童心に返って秘密基地に来たかのような気持ちになる。なぜなら、部屋の中にレーザーカッターや3Dプリンターなどの工具や、さまざまな作品が転がっているからだ。

 無事打ち合わせも終わり、一息ついた時、ある作品が目に留まった。不要になった電子回路基板を使ったキーホルダーだった。「環境関連のイベントで参加者に差し上げたノベルティーの試作品です」と、「つくるーむ」運営担当の井内育生さんが説明してくれた。イベント参加者からも好評だったという作品を見て、筆者も何か作ってみたいという衝動に駆られた。

20190607_01.jpg電子回路基板を使ったキーホルダーの試作品

 そこで日を改めて、実際に廃材を使って作品を二つ作ることにした。一つ目は、やはり不要になった電子回路基板を再利用したコースター。まずは専用ソフトを利用しながら、コースターの形や印字をデザインする。初めて利用するソフトだったが、「つくるーむ」運営の北川岳寿さんにサポートしてもらいながら、何とか四角に形成できた。

20190607_02.jpgコースターデザインの作成作業

 次に、デザインしたデータを基に電子回路基板とアクリル板をレーザーカッターで切断する作業。基板上の電子部品によってカッターの刃が折れないように注意しながら、慎重に少しずつ基板を削っていった。

20190607_03.jpgレーザーカッターで基板を切断

 最後にアクセサリー作成などに用いられる樹脂液を使い、電子回路基板とアクリル板を接着した。電子回路基板には部品の凸凹があるため、滑らかになるように樹脂液をたっぷり付けるのがコツという。

20190607_04.jpg樹脂液を使った塗装

 ただ、実際は樹脂液の塗り方にムラがあったため、ぐらつきが出てしまった。それでも、コースターとして利用できそうな代物が完成した。

20190607_05.jpg完成したコースター

 続いて二つ目の作品に着手。今度は木材を利用したリコーのロゴマークのオブジェづくりに挑戦した。こちらは「RICOH」の「R」の文字データを読み込み、コースターと同じようにレーザーカッターで切断。板が薄かったため、3枚張り合わせて厚みを出すことにした。

20190607_06.jpgレーザーカッターによる木材の裁断

 二つの作品は計1時間半ほどで完成し、当研究所のオフィスに持ち帰って見せると、想像以上にメンバー間で「わたしも作りたい」「コースターの『リコー経済社会研究所』という漢字のデザインは固いわね」などと会話が弾んだ。リコーロゴのオブジェは研究所内のオープンスペースに飾ることとなった。

20190607_07.jpg完成した「R」のオブジェ

 働き方が変わるとオフィスの在り方も変わる。テレワークなどが増えれば、社員同士が顔を合わせる機会も必然的に減るだろう。こうした中、今回のような廃材を利用した作品は、オフィスが結節点となって社員同士が交わる「潤滑油」の一つとして使えるのではないだろうか。

 特に製造業であれば、自社製品の廃材を入手するのは容易なはず。さまざまなアイデアや技術によって新たな息吹を与えることは、SDGsの観点からも少なからず貢献できるのではないか。小さな一歩かもしれないが、潤滑油が不足気味に見える社内の「空気」を変えていけたらいいなと思う。

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(写真)筆者

西脇 祐介

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