2019年06月24日
地球環境
研究員
今井 温子
「この野菜、ナマで食べられそうにないけど、これから料理に使うの?食品ロスって知っている?」―。先日、台所で夫から指摘された。もちろん、「食品ロス」という言葉は知っている。売れ残りや賞味期限切れ、食べ残しなど、本来食べられるのに廃棄される食品のことだ。共働きのわが家では、買い物時間を減らしたい事情がある。このため、「足りないよりは良い」と自分に言い聞かせながら、食品をちょっと余計に購入→ごく一部を廃棄という小さなロスを生んできた。
国連食糧農業機関(FAO)によると、世界の食料廃棄量は年間約13億トン。何と人の消費のために生産された量のおよそ3分の1を占めるという。(「世界の食品ロスと食料廃棄」2011年)。このため、SDGs(持続可能な開発目標)の中でも、2030年までに世界全体の一人当たり食糧廃棄量の半減が掲げられている。
消費者庁の調査では、日本でも年間643万トンが食品ロスとして廃棄され、うち家庭からの排出が約4割を占めるそうだ。このため、食品ロスの問題を認識し、対策を講じている人の割合は7割を超える。ところが、家庭からの廃棄量は人口減少にも関わらず、横ばいで推移している。
日本の食品ロス(推計)
(出所)消費者庁・食品ロス削減関係参考資料(平成30年6月21日版)、環境省・食品廃棄物等の利用状況等(平成28年度推計)<概念図>
食品ロスを認識し、その削減で何らかの行動をしている国民の割合
(出所)消費者庁・食品ロス削減関係参考資料(平成30年6月21日版)、平成30年度消費者の意識に関する調査結果報告書
こうした状況を受け、政府・国会も危機感を強め、2019年5月に「食品ロス削減推進法」が成立した。一方、産業界も食品ロス対策を加速させている。大手コンビニでは消費期限が迫った弁当やおにぎりなどへのポイント還元、すなわち実質的な値引きを試行。とりわけ売れ残りが批判されていた季節商品のおせち料理や恵方巻についても、完全予約制の導入が始まっている。こうした取り組みは、生産から小売まで食品のサプライチェーン全体の見直しにつながる可能性がある。
家庭でもできることから始めたい。買い過ぎない、作り過ぎない、家庭で余った食品を寄付する(=フードドライブ)などである。わが家ではまず、食材を余らせないように発想と行動を転換したい。例えば、残り物が出ないミールキットなどのセット食材の活用である。
できれば、購入した食材を元に1週間分の献立を作ってくれたり、残り物が出ないおすすめ夕飯レシピを教えてくれたりする情報サービスが増えてほしい。そうすれば、苦痛ともいえる献立を考える時間が短縮でき、生活にも余裕が生まれる。
このように調理のメニュー化が進んでも、「家庭の味」が失われるわけではない。逆に、献立を考える苦痛から解放されると、最後の味付けに一層集中することができ、独創性を高められるからだ。食品ロスを減らすことにより、料理の腕も上がる。一石二鳥ではないだろうか。
家庭の食材
(写真)筆者
今井 温子