2019年07月16日
地球環境
企画室
岩下 祐子
筆者の住む川崎市内のスーパーで、衝撃的な光景を目にした。年配のご婦人が精算を終えた食料品をトレイから取り出し、中身だけをスーパーに置いてある無料ビニール袋に移し替えていたのだ。トレイと包装していたビニールは、袋詰め台の下のゴミ箱へ。よくよく足元を見ると、ごみ箱には「燃えるごみ」「燃えないごみ」と記載があった。「燃えないごみ」に捨てていた婦人は、きちんと分別していたのだろう。
食料品レイトとペットボトル
(写真)筆者
スーパーの担当者に聞いてみると、「家庭ごみを減らしたいためにやっているのではないかと思われます。特段、注意などはしていません」とのこと。そのスーパーでは閉店後、きちんと分別がなされているか、ゴミ箱の中身を確認しているだけという。
後日、近隣に住む知り合いにこの目撃談を話したところ、「スーパーでは普通に見かける光景よ」と言われ、二度驚いた。調べてみたら川崎市の2017年度の一人当たりの1日のごみ排出量は、834グラムで政令指定都市では最も少なく、第1位にだった。(2019年3月発表の環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(平成29年度)」)。冒頭で紹介したご婦人のように、市民の環境意識は確実に高まっている。
ここに至るには、行政の施策の積み重ねもあったようだ。その一つが、普通ごみの収集回数の削減だ。かつて川崎市は普通ごみ(空き缶・ペットボトル・空きびん以外)を週6回収集していたが、いつでも捨てられるという気軽さもあって、排出量の増加を招いたという。そこで、2005年に週4回、2007年に週3回、2013年からは週2回へと削減。さらに、資源ごみの分別収集も厳格化した。2011年には資源紙を、2013年にはプラスチック製容器包装も分別収集するなど、あえて煩雑にすることで市民の意識改革を促したのだ。
ただ、「かわさき市政だより」によると、資源紙とプラスチック製容器のうち、約6割が分別されずに普通ごみとして燃やされているという。その意味では、まだ道半ばともいえる。
では後は何が足りないのだろうか。筆者は市民のエコ意識を徹底した行動に結び付けるには、丁寧な情報提供が欠かせないと思う。例えば、6月15、16日両日に軽井沢で開かれた20カ国・地域(G20)エネルギー・環境相会合。ここで、「海洋プラスチックごみ(廃プラ)削減に向け国際枠組みの創設で大筋合意した」などと報道されているが、これだけでは自分がどうすべきか、明確に想像できる人は少ないのではないか。メディアに責任を押し付けるわけではないが、原因と結果の因果関係を明確にしてもらえば、詰まるところ個人の問題であると受け止めることができると思う。
ここまで書いてきて、「今日から何ができるのか」と自問してみた。節電・節水やエコバッグ持参の買い物、ごみの分別・リサイクル...。その多くが実践済みだ。できる範囲で新たに何か付け加えるとしたら...。と考えた末に思い付いたのが水筒持参である。まずは、日々買っているペットボトルの飲料水を、週1回ぐらいマイ水筒で置き換えたい。密かにそんな決意を固めていた。
岩下 祐子