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「純国産エネルギー」地熱発電を拡大するには?

火山列島をプラス思考でとらえると…

2015年10月01日

地球環境

主任研究員
西田 主税

 2011年の東日本大震災以降、日本列島の火山は活動期に入ったらしい。昨年の御嶽山の噴火では、多くの登山客が犠牲になった。今年は口永良部島の噴火や桜島の活動活発化に伴い、住民は避難を余儀なくされた。首都圏でも箱根山の噴火で周辺立入りが制限され、観光業への影響が懸念される。だれもが火山災害に不安を覚えるが、これを自然エネルギーの利用というプラス思考でとらえられないか。有数の火山国である日本には、世界第3位に相当する地熱資源が存在するとされるからだ。

世界の主な地熱資源量

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 エネルギーの自給率向上の観点はもちろん、新たな国際的枠組づくりが進む地球温暖化対策としても、純国産の再生可能エネルギーである地熱資源には期待が高まっている。

 2020年以降の地球温暖化対策の新たな枠組みについては、今年12月にパリで気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)が開かれる。そこでの合意を目指し、日本や米国、欧州連合(EU)、中国、ロシアなどの主要国・地域が二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出削減目標を相次いで公表している。

 こうした中、日本は温室効果ガスの排出量を「2030年度に2013年度比で26%削減する」という提案を行った。その根拠となる長期エネルギー需給見通しでは、2030年度の日本の電源構成案が示されている。具体的には、徹底した省エネを前提にした上で、再生可能エネルギーを22~24%、原子力を20~22%と見込んでいる。

 ただし、電力小売りの全面自由化が来年4月に予定される中、新規の電力供給者の原子力発電事業への参入はまず不可能という現実を考えると、原子力のシェアは構成案より減らざるを得ない。逆に、再生可能エネルギーのシェアがさらに高まるという声も少なくない。

 実際、2030年度の構成案では、再生可能エネルギーのシェアが2013年度比で概ね倍増することになっている。中でも、太陽光とバイオマスのシェアの伸び率が非常に大きい。他方、地熱のシェアについては、2013年度(約0.3%)から2030年度にかけて3倍強の増加が見込まれるとはいえ、それでも総発電量のわずか1%程度に過ぎない。

 地熱発電に関して、日本は世界第3位の資源量を誇り、技術水準も高いといわれているのに、なぜ利用が進まないのか。その主な理由を以下に整理した。
(1)地熱発電は蒸気タービンを回して発電する。採算に見合う蒸気の量を採りだせるか否かは、掘ってみないと分からないというリスクがある。
(2)国内の地熱資源量の約8割が国立・国定公園の中にあり、開発に厳しい制限が課せられている。
(3)自然保護団体や旅館業者が自然景観や温泉源への影響の観点から反対することが多く、調整に長い時間を要する。


2030年度に見込まれる電源構成案

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日本の地熱発電所の位置図

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 このため、地熱発電の課題は少なくない。政府は多額の資金が必要となる山間地の調査・開発に対し、財政的な支援策の拡充を図る予定である。また、国立・国定公園内の核心部分である特別保護地区とそれに次ぐ第1種特別地域除くエリアでは、高さ制限を緩和する。さらに、第1種特別地域でも、自然景観に影響を与えない「傾斜掘削」を認める方針である。

 地熱の利用拡大に向け、政府はようやく本格的に動き始めた。これからは施策が迅速かつ大胆に実施されるよう、地方自治体が積極的に地元調整の旗振り役を担うことが期待される。地元の理解を得ながら、環境保全と両立させた地熱の開発・発電事業を官民一体で展開していくことが重要ではないだろうか。純国産の再生可能エネルギーが大量に眠っているのだから、天然資源に乏しい日本こそ、地熱を開発・利用していく意義は大きいはずである。


傾斜掘削のイメージ
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西田 主税

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※この記事は、2015年10月1日に発行されたHeadlineに掲載されたものを、個別に記事として掲載しています。

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