2023年06月28日
前照灯
所長
早﨑 保浩
筆者が社会人になったのは1983年。40年も経ったと思うと、時の流れの速さを感じざるを得ない。その後、92年秋に当時の職場で職位者となり、公式に部下を持つ立場となった。その時を振り返ると、上司像は今と大きく異なっていたように思う。
理由はいくつかある。まず、以前の上司は偉ぶっていた記憶がある。今は、部下の人格を尊重し、対等な目線で語りかけ、真摯(しんし)に話に耳を傾けることがスタンダードだ。
また、その頃は上司が部下の人事権を握り、部下から評価されることはなかった。今では、多くの職場で「360度評価」が取り入れられている。部下からの評価には厳しい内容も多い。指摘を受け止め改善を図ることが、重要なプロセスとなっている。この際、謙虚さや真摯さが大事であることは言うまでもない。
そして、かつては上司が情報を握り、情報の優位性を用いて上に立つことができた。しかし、インターネット時代の到来に伴い、誰でもさまざまな情報にアクセスできるようになった。また、インサイダー情報を含む社内の機密情報管理の重要性は一段と増しているが、部下への権限委譲が進む中で、「Needs to know」の考え方に沿って部下に情報を共有することが、効率的に仕事を進める上で不可欠である。
要は、偉ぶることも人事権も情報優位性も無くなっていく中で、上司として機能を果たしていくことが求められる時代になったわけだ。
さて、今年に入り、生成AI(人工知能)に関する報道を見かけない日の方がまれになった。5月に広島で開催された先進7カ国首脳会議(G7サミット)でも、議題のひとつに上ったほどだ。多くの人が生成AIのリスクと可能性の両面を指摘し合い、議論は収れんしていない。
これを上司の立場でみるとどうなるだろうか?上司は部下に対し、調べもの、アイディア出し、資料作成などさまざまな発注を行い、部下の対応に支えられる形で仕事をしている。ある面では、生成AIを活用できれば、部下抜きで仕事ができるのかもしれない。逆からみると、生成AIの力を借りれば、誰でも上司になれるのかもしれない。
上司にとって、多難な時代が続く。
早﨑 保浩