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人手不足解消に「神の手」を借りる

=セミ・セルフでレジ待ち解消=

2017年07月31日

内外政治経済

研究員
倉浪 弘樹

 日本の景気が上向き、さまざまな製品やサービスに対する需要が高まってきた。一方で、それを供給する側の企業の人手不足は深刻な問題となっている。

 日本銀行が7月3日に発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)によれば、日本企業の景況感を示す「業況判断」が改善を続ける中、人手が「過剰」とみる企業の割合から「不足」とみる企業の割合を差し引いた「雇用人員判断」の値はマイナス25となっており、企業の人手不足感は依然として強い。

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(出所)日本銀行
(注) 調査対象の全企業の合計値

 このような状況の中、身近なところで人手不足解消に向けて努力する企業を見つけた。それは、筆者がよく利用するスーパーマーケットである。このスーパーは駅から近く、会社帰りの会社員も数多く利用するため、夜遅い時間まで混雑している。このため、いつもレジ前には長蛇の列ができ、レジ係が足りていない状況だった。

 しかし、このスーパーは先月、「セミ・セルフレジ」と呼ばれる端末を導入し、レジ業務の効率化に乗り出した。これは、通常のレジ端末とは別に設置された支払い専用機で、顧客が自分で代金決済する仕組みだ。ひと頃注目された、商品登録から代金決済までのすべてのレジ業務を利用客が行う「セルフレジ」(フル・セルフレジ)とは異なり、端末の機能を代金決済に限定しているのが特徴だ。

 利用客から購入商品を受け取ると、レジ係はまず通常のレジ端末で商品登録を済ませる。利用客は登録済みの商品カゴを持ってセミ・セルフレジに移動し、モニターに表示される購入合計金額を現金で投入する。

 レジ端末よりも、セミ・セルフレジの端末が多めに設置されているため、「支払い待ち」が発生することは少ない。利用客は、自身で決済する手間が発生するものの、早く支払いを終えられるので、顧客満足度はむしろ向上する。

 一方でレジ係は、利用客が決済のために財布からお札や小銭を探す時間を待つことなく、すぐに次の利用客の応対を始められるため、1件当たりのレジ業務の時間を短縮できる。

 こうして、このスーパーはレジ業務の一部である「代金決済」を利用客に任せて「分業」することにより、業務を効率化しているわけだ。セミ・セルフレジの導入後はレジ待ちの列は解消され、少数のレジ係で利用客の応対もできているようだ。

 もちろん、「フル・セルフレジ」を導入し、すべてのレジ業務を利用客に任せることも考えられる。しかし、バーコードが付いていない商品やセール品などをレジに登録するには個別の操作が必要なため、利用客が商品登録の操作に手間取り、サポートスタッフが必要になったり、レジ待ちの列ができたりすることも珍しくない。

 それゆえこのスーパーでは、操作が複雑な商品登録は業務に習熟したレジ係が行い、操作が簡単な代金決済の部分だけを利用客に任せる。というレジ係と利用客の「理想的な分業のバランス」を実現できる、セミ・セルフレジが活躍しているというわけだ。

 このように、企業が人手不足を解消するためには、「人手のかかる業務」の一部を顧客に任せるのは妙案だろう。身近なスーパーの取り組みから、人手不足解消のコツを教わった気がした。

 接客の業界では「お客様は神様である」という言葉がよく聞かれる。人手不足で「猫の手」も借りたいこの時代、ここはひとつ「神の手」を借りてみてはどうだろうか。企業と顧客との間のちょうどいい関係が見つかるかもしれない。

倉浪 弘樹

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