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人手不足業種、飲食業に見る「働き方改革」の実情

=撤退か継続か、求められる経営判断=

2017年12月05日

内外政治経済

研究員
倉浪 弘樹

 先日、久しぶりに自宅近くのファミリーレストランで夕食を取っていると、ファミレスに「缶詰」になって宿題に取り組んだ学生時代をふと思い出した。学友たちと夜な夜な集まっては、宿題を終えた後も店にとどまり「ドリンクバー」のコーヒーを飲みながら朝まで粘っていたものだ。だが、それはもうできなくなるかもしれない。自分が学生でなくなったからではなく、ファミレスが24時間営業を見直し始めているからだ。

 ある大手ファミレスでは、2016年に24時間営業の見直しを進め、最近ではさらなる営業時間短縮に向けて動き出している。大手居酒屋チェーンでも定休日を設けるところが出始めるなど、対策に追われている。いずれも人手不足が深刻化しているためだ。「全国企業短期経済観測調査」(日銀短観)でもそれは明らかで、企業の人手不足感を示す「雇用人員判断DI」を業種別に見ると、「宿泊・飲食サービス」が断トツ。逆に言えばこうした業種では、事業の存続のためには「働き方改革」を加速させる必要があるはずで、先進事例として調べてみたら面白いのではないかと考えた。

図表:雇用人員判断DI(2017年10月)

20171128_01a.jpg(出所)    日本銀行「全国企業短期経済観測調査」
(注)「雇用人員判断DI」は、雇用する人員が「過剰」であると回答する企業の割合から、「不足」であると回答する企業の割合を差し引いた値。
全規模の企業を対象にした結果を図示。

 そこで、飲食業の知人に、どのような取り組みをしているのか尋ねてみると、「社員の労働環境の改善」に注力しているという答えが返ってきた。店舗に勤務する社員は、朝から深夜までの長時間働き詰めのケースが多く、このため、社員の負担が大きな問題となっていた。これを防ぐために、連続で長時間続く勤務体系を見直しているという。

 例えば朝の仕事には、店舗の清掃や材料の仕込みなど、専門性が必要とされない仕事も多い。これを他の社員やアルバイトに「分業」することで、夜遅くまで勤務した場合は出勤時間を遅くすることでき、負担が軽減されるというわけだ。飲食業は一般的に離職率が高いため、労働環境を改善すれば、離職率を抑える効果も期待できるはずだ。

 その一方で、課題もある。仕事を分業するためには、どの仕事を切り出せるのか考えたり、その手順の説明はどうするかなど、別の仕事が発生する可能性がある。そもそも、早朝や深夜帯などに人手が集まりにくいといった構造的な問題がある。やはり時間がかかるとしても、新規の労働参加を促すための仕組みから整えていかなければ業界全体の課題解決には結びつかない。

 一例として挙げたいのは、初めての仕事でもすぐに習熟できるような仕組みづくりである。ある日本企業は、社員に専用ヘッドマウントディスプレイを貸与し、360度の仮想現実(VR)の映像を見せながら仕事を疑似体験させる研修サービスを検討している。体で覚えられるので仕事の理解が早まる上に、映像を利用するためマニュアル化しづらい人の手の動きなども伝えられる。この仕組みはもともと米国の大手小売店が導入したもので、米国内でも注目されているという。

 日本の労働市場全体を俯瞰(ふかん)してみると、日本人の労働時間は1988年に法定労働時間を週40時間に短縮して以降、減少傾向にある。だがこれは、パート・アルバイトなどの短時間労働者の比率が上昇したことで、労働者全体の平均労働時間が減少しているためだ。フルタイムの労働時間は依然として長く、例えば、週49時間以上就業する「長時間労働者」の比率は国際的に見ても高水準にとどまっている。

図表:日本人の年間総労働時間推移(左)と長時間労働者比率(右)

20171128_02.jpg(出所)    労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2017」」

 さらに、総務省が発表した2016年の「社会生活基本調査」を見ると、長時間労働者ほど早朝から出勤している割合が高いことがわかる。つまり、労働環境の改善余地は多く残されていると考えられるわけで、仕事の一部を分業する取り組みは、飲食業に限らずさまざまな企業で必要となってくるのではないだろうか。

 図表:7:00までに出勤している人の割合(週間就業時間別)

20171128_03b.jpg(出所)総務省「社会生活基本調査」を基に作成

 こうした取り組みは、国も支援を行っている。例えば、勤務終了後に9時間以上の「休息時間」を設けて労働者の生活時間や睡眠時間を確保する「勤務間インターバル」制度を、新規に導入したり、既に導入した制度を適用する社員を拡大したりする中小企業には助成金が交付されるという(※)。

 もちろん、仕事を分業するために新しく人を雇えば、企業の人件費が上昇する可能性がある。しかしそれは、その仕事を遂行するために本来必要なコストでもある。もしコストを増やしてまでやる必要がない仕事であれば、その仕事自体を削減することも検討に値するはずだ。冒頭に触れた大手ファミレスによる24時間営業の見直しも、深夜帯の売り上げと社員を配置するコストを比較検討した経営判断に基づくものだろう。

 働き方改革の別の側面として、仕事のアウトプットとそのために必要なコストを比較し、合理的に仕事の必要性を判断するといった点で、経営者に決断を迫っているともいえそうだ。


※この制度は厚生労働省による「職場意識改善助成金(勤務間インターバル導入コース)」であり、申し込み受付は2017年12月15日までとなっている。詳しくは、厚生労働省のサイトを確認されたい。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000150891.html

倉浪 弘樹

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