Main content

コミュニケーション能力は必須「忍者の情報戦略」

=日本危機管理学会が安全保障研究部会=

2021年08月02日

内外政治経済

研究員
芳賀 裕理

 日本危機管理学会は2021年7月11日、安全保障研究部会(部会長・下平拓哉常任理事)の2021年度第1回会合をリモート開催し、三重大学人文学部の山田雄司教授が「忍者の情報戦略」について講演した。江戸時代に活躍した忍者が情報をどのように入手・伝達していたかなどを、興味深いエピソードを多数交えながら分かりやすく解説した。

写真山田雄司氏「忍者の情報戦略」
(提供)山田雄司氏

 山田氏はまず、忍者の担う「忍び」について、役割や心得、職務、ふさわしい人物像などを説明。その上で、忍者の情報収集について、隠忍(=姿を隠して忍び込む術)と陽忍(=その姿をさらしたまま敵中に潜入する術)に大別した。さらに忍者の情報伝達に関し、相図や狼煙(のろし)、五色米、密書・暗号を詳しく解説した。

 忍者に求められる資質について、兵法家の小笠原昨雲は「軍法侍用集」(1618年)の中で、①知恵のある人②記憶力の良い人③コミュニケーション能力に優れた人―を指摘している。このうち③では、当時の重要な情報収集の場である寺や神社で、僧侶などと仲良くなり情報を入手する術が重要だったという。

 また、江戸時代の忍術伝書「万川集海(ばんせんしゅうかい)」によると、情報伝達の際に狼煙を1つだけ上げると、合図なのか、旅人が松明(たいまつ)を灯しているのか判別できないため、数メートル間隔で狼煙を3つ上げていた。実際、伊賀の山城の上には狼煙台が数カ所確認されているという。

 講演後の質疑応答では、会員から「忍者は入手した情報をどのように取捨選択して主君に伝えていたのか」「暗号の変更頻度はどれぐらいか」などの質問が相次いだ。山田氏は前者について「忍者の独自判断で伝達内容を変える場合もあった」と述べ、見聞きしたことをそのまま伝えるだけではなかったと指摘。また後者については、「合言葉の場合、その日のうちに変えるものがあれば、3日で変えるものもある」と解説した。

写真質問に答える山田氏
(写真)筆者

 一般社団法人・日本危機管理学会の活動や入会に関心のある方はホームページを御参照ください。(https://crmsj.org/

芳賀 裕理

TAG:

※本記事・写真の無断複製・転載・引用を禁じます。
※本サイトに掲載された論文・コラムなどの記事の内容や意見は執筆者個人の見解であり、当研究所または(株)リコーの見解を示すものではありません。
※ご意見やご提案は、お問い合わせフォームからお願いいたします。

戻る