2022年11月02日
内外政治経済
研究員
中澤 聡
米国の中間選挙が11月8日に迫っている。バイデン政権への信任が問われるこの選挙で、与党である民主党は苦戦中。大敗することになれば、バイデン大統領の今後の政権運営に加え、2024年の大統領選挙にも影響しかねない。米国民はどのような評価を下すのか。近年、存在感を高めている予測サイトに注目して選挙の行方を占った。
中間選挙とは大統領選の「中間」年に行われる上院、下院議員選挙を指す。上院の任期は6年、下院は2年、上院については2年ごとに3分の1議席が改選される。
米国の選挙制度
(出所)リコー経済社会研究所
現在、民主党と共和党の勢力は上下院とも拮抗している。上院は100議席を両党が50議席ずつ分け合う形。ただし、採決で同数の場合は上院議長を兼務する副大統領が決裁票を投じるため、辛うじて民主党が優位となっている。下院も民主党が優位であるが議員の51%を占めるに過ぎず、差は大きくない。
改選前の勢力図(上図:上院 下図:下院)
(出所)リコー経済社会研究所
この勢力図が中間選挙後でどう変わるか。米マスコミの報道を見ると、接戦が繰り広げられている。例えば、米ニューヨーク・タイムズと米シエナ大学が10月9~12日に実施した投票先の調査では、共和党が49%、民主党が45%だった。9月の調査では民主党優位であったが逆転した形だ。
米マンモス大学が10月3日に発表した世論調査でも、同様の逆転が起きた。民主党と共和党のどちらに下院議員の多数派に望むかに対し、共和党が47%、民主党が44%だった。こちらも8月の段階では民主党が優位であった。足元では共和党の勢いが増しており、「ねじれ議会」になる可能性が高まっている。そうなればバイデン大統領の政権運営はこれまで以上に難しくなり、2期目への挑戦が厳しくなる可能性も否定できない。
しかし、近年のこうした世論調査の正確性を疑問視する見方もある。きっかけは2016年の米大統領選挙だった。下馬評ではヒラリー・クリントン氏(民主党)が優勢とされていたが、ドナルド・トランプ氏(共和党)に敗れる番狂わせが起きた。また、その直前に行われた英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる国民投票でも、優勢とされたEU残留派が敗れた。もはや、従来型のアンケート調査では、正確な世論動向をつかめないとの指摘もある。
そうした中で注目されているのが、政治系の予想サイトだ。独自のデータ分析手法を駆使し、世論の「真意」を探っている。リアルタイムに近い形で更新される速報性や、一目で情勢が分かるビジュアル面の工夫などにより、注目されている。
このようなサイトの草分けとされている「ファイブサーティエイト」の予想を見てみよう。10月7日時点で、上院は非改選と優勢を合わせ民主党が47議席。共和党は46議席と拮抗している。全議席改選の下院(定数435)では、民主党優勢が192議席に対し共和党優勢が209議席と優位に立っている。
一方、予想サイトの「リアル・クリア・ポリティクス」を見ると、9月28日時点で上院の民主党は非改選が36議席、安全圏が6議席で計42議席。これに対して共和党は非改選が29議席、安全圏が15議席で計44議席だった。激戦区になっているアリゾナ州、ジョージア州など7議席が勝敗を左右しそうだ。今のところ、先に見た世論調査との大きなズレはないようだ。
こうした予想サイトを見る利点は、新聞や大学の調査に比べ更新頻度が高いことだ。民意の変化を敏感に反映するため、接戦の選挙区でどちらに勢いがあるのかがわかる。現在の米国は、インフレ、ロシア情勢への対応など世論を左右する問題が多い。候補者の失言1つで情勢が変化することも十分考えられる。選挙結果は米国の対日政策にも大きな影響を与えるだけに、ラストスパートに入った接戦区から目を離せない。
米中間選挙(イメージ)
(出所)stock.adobe.com
中澤 聡