2016年01月01日
内外政治経済
所長
稲葉 延雄
本年の世界経済をめぐっては様々な論調がみられるが、高い成長を予想する向きは多くない。一言でいうと、デフレ気味の景気拡大(Deflationary Boom)が続くということであろうか。
先進国と新興国に分けると、まず新興国は中国を筆頭に減速下にあり、資源輸出国の停滞も続いている。ひところの新興国経済が世界経済を牽引していた時代は終わりを告げた。これに対し、先進国では米国を中心に比較的高い成長が続いており、欧州や日本も緩やかな拡大のモメンタムが維持されている。
新興国の景気減速は需要面で世界経済にマイナスの影響を及ぼす。こうした世界需要のマイナスの影響にシェールガス革命の動きが加わって、原油を中心とする資源価格が急落・低迷している。このデフレ的な動きが、先進国の家計部門の購買力を支える方向に作用しており、これが先進各国の景気拡大にプラスの影響を及ぼしている。
主要各国とも、経済政策的には金融であれ財政であれ、余力が極端に乏しくなっている。このため、現在の緩やかな景気拡大の動きをできるだけ持続させるよう、努めることが肝要であろう。いたずらにバブルを起こしたり、財政破綻を招いたりせぬよう、慎重な政策運営が求められる。
一方で、主要国の産業界は山積する様々な社会的な難問題を、技術開発やイノベーションの力で解決する責務を負う。新しい財・サービスを安価に提供することで、人々が安全で豊かな生活を享受できるよう、努めねばならない。
社会の諸問題解決がますます難しくなっているのに反して、政治や行政の処理能力は必ずしも十分に追いついていない。それだけに、本年も産業界に対しては将来を見据えた大胆な行動が期待されている。
稲葉 延雄