2016年07月01日
最先端技術
研究員
平林佑太
東京から在来線を乗り継いで約2時間、JR御殿場駅から15分ほど車を走らせると、真っ白な外壁にグリーンのカラーリングが印象的な建物が目に飛び込んでくる。
かつてリコーが複写機の主力工場としていた旧御殿場事業所。それが同社の創立80周年記念事業の一環として今年4月、環境事業の創出拠点「リコー環境事業開発センター」(静岡県御殿場市駒門)に生まれ変わった。
リコー環境事業開発センターの環境棟
(提供)リコー広報室
旧工場建屋をリノベーションした環境棟は、日本全国から回収される年間約8万台の複写機を分解し、2万台の再生機として再出荷する一大リサイクル拠点だ。部品の再利用にあたっては、独自の診断システムで厳しく選別する。その上で洗浄や再組立を行い、再生機に対しても新品と遜色ない品質保証が講じられる。
全国から回収後、リサイクルされる複写機
(写真)筆者 PENTAX K-50 使用
この環境棟では、省資源・創エネ・省エネの三つを柱とする新技術・新事業の開発も進められる。まず、「廃プラスチックから水素を取り出す技術」「敷地内の水路を活用するマイクロ発電」「画像認識技術を応用した電気自動車やドローンの自立運転」-など十のテーマについて取り組む。
新設された実験棟では、プラスチックの油化技術の実験が始まっている。回収した使用済みトナーカートリッジを丸ごと溶融し、金属や重油、軽油などに分けて抽出する。年間約3000トンのカートリッジを再資源化することで、1億円規模のコスト削減を実現する。
新設された実験棟
(提供)リコー広報室
環境事業開発センターでは開発のスピードアップを図るため、東京大学や東北大学、御殿場市、川崎市などと産学官連携事業を始めた。また、 2019年には御殿場市の全面バックアップにより、敷地の隣りに東名高速道路のインターチェンジが新設される。交通アクセスが大幅に改善されるため、このセンターを拠点にしてグループ外企業や大学などの研究機関との連携が強まり、人材の交流も加速しそうだ。
地球温暖化など環境問題が深刻化する中、リコーグループは企業の社会的な責任として二酸化炭素や廃棄物の排出削減に取り組んでいる。それにとどまらず、社会全体の環境負荷低減を目指し、独自の技術やサービスを積極的に外販。2020年度には環境事業で売上高1000億円という目標を掲げる。その過程で環境事業開発センターは、「環境のリコー」を象徴するランドマークに成長していくだろう。
リコー環境事業開発センターの概要
https://jp.ricoh.com/release/2016/0415_1.html
平林佑太