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あなたの部屋に「ロボット蜂」が飛んで来る日

2014年10月01日

最先端技術

主任研究員
栗林 敦子

 自宅にやって来た旧友の手土産がちょっと洒落ていた。東京のど真ん中で採れたという、蜂蜜を使った洋菓子である。あるNPOがビル屋上でミツバチを飼い、その群れが銀座から皇居、浜離宮、霞が関などを飛び回り、大量の蜜を集めて来る。それを使った老舗洋菓子店のスイーツが人気だという。

 大都会でミツバチが活躍を始める一方、養蜂業者が飼育している大量のミツバチが突然姿を消すという、ミステリアスな現象が起きている。「蜂群崩壊症候群」(Colony Collapse Disorder)と呼ばれるもので、2006年にまず米国で問題になった。その後、欧州から同様の事例が報告され、日本でも養蜂場でミツバチの大量死が相次いでいるが、原因については農薬など諸説ある。

 国連環境計画(UNEP)のアヒム・シュタイナー事務局長は「世界の食料の9割を占める100種類の作物種のうち、7割はハチが受粉を媒介している」と指摘する。仮にハチがいなくなれば、農作物への影響が甚大であり、われわれの食生活にも深刻な打撃となるのだ。

 「人工的にミツバチを作れないものだろうか」―。こう考えた米ハーバード大学の研究者らはミツバチと同じ大きさの超小型飛行ロボットを作り、このロボット同士を互いに協力させながら、人工の群れを形成しようという研究をはじめた。昨年、大きさと重さがミツバチとほぼ同じ「ロボビー(RoboBee)」の開発に成功し、実際に飛んでいる姿の動画を公開している。
(https://www.youtube.com/watch?v=hEZ7rHRifVc)

 ミツバチやアリといった小さな昆虫の一匹一匹は非力だし、頭もあまり良くない。しかし、いったん群れを形成すると、全体で優れた仕事をやってのける。こうした昆虫そっくりの人工知能を備えた超小型ロボットを開発できれば、たとえ一体一体の処理能力は低くても、群れを作ることで「賢さ」を引き出すことが可能になる。昆虫ロボットを安価で大量生産できれば、高性能だが高価なロボットより、生産性が飛躍的に向上する可能性もある。

 ロボビーは、植物の受粉というミツバチ本来の機能に加え、様々なシーンで活躍が期待されている。交通監視、気象観測、災害現場での行方不明者の捜索やガス漏れの検知、軍事目的の偵察...。しかし、ロボット蜂が殺人兵器となり、群れを成す光景は想像するだけで恐ろしくなる。

 そう考えていると、エレクトロラックス(本社スウェーデン)が公募した「未来の家電製品」の中に、微笑ましい作品が見つかった。2013年の最優秀賞に輝いた自動クリーニングシステム「Mab」である。

 受賞したコロンビアのデザイナー、エイドリアン・ペレッツ・サパタ氏はミツバチの群れを見て、「蜂型ロボットに家の中を掃除してもらおう」と思いついた。そして、汚れた部分を検知すると本体から数百もの蜂型ロボットが飛び立ち、洗浄液を撒いて床や壁を磨き上げるというシステムを考案した。羽音を環境音楽として楽しみながら、蜂型ロボットが部屋をピカピカにしてくれる日が待ち遠しい。
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栗林 敦子

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※この記事は、2014年10月1日に発行されたHeadlineに掲載されたものを、個別に記事として掲載しています。

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