2019年09月27日
最先端技術
研究員
米村 大介
筆者が会員として所属する一般社団法人・日本危機管理学会は2019年9月6日、AI危機管理研究部会の初会合を国際社会経済研究所(東京都港区)で開催した。本研究部会は、人工知能(AI)の開発競争が国境を越えて激化する中、AIがもたらすメリットとリスクを予測し、政府・企業などに求められる危機管理の提言などを目的としている。
原田泉・日本危機管理学会会長
初会合ではまず、日本危機管理学会の原田泉会長(国際社会経済研究所上席研究員)が基調講演を行い、①AIの分類②機械学習とは③AIのリスク―などについてとり上げた。原田氏は最近視察した中国のビッグデータ特区などの報告を交え、AI開発最前線の実態を分かりやすく解説。AIが火薬、核兵器に次ぐ「第3の軍事革命」を引き起こす可能性などを指摘したほか、AIが人間の意志に逆らって暴走する社会的リスクなどに警告を発した。
AIがもたらすリスクをめぐり議論が白熱
基調講演後の意見交換では、国家体制とAIの関係について、英国の作家ジョージ・オーウェルが小説「1984」で描いた世界のように、国民に識別番号を強制付与してビッグデータを容易に入手できる国がAI開発競争で優位に立つとの意見が出された。これに対し、いわゆるGAFAなどが提供するプラットフォームをビジネスモデルの基盤とする発想は元々、統制国家からは生まれていないという指摘があった。また、北欧は民主主義国家でも、国民は国家による識別番号の利用に協力的であり、歴史的観点からの分析が欠かせないといった示唆もあった。
さらに、AIが及ぼす職業への影響についても活発な議論が行われた。そもそもAIによる失業と不景気による失業との間に違いはないという意見に対し、AI時代特有の富の再分配や職業教育などについては真剣に検討する必要があるといった指摘も出された。
本研究会は初会合ということもあり、出席者からは次々と懸念が提起された。改めてAIは技術やビジネスだけの問題ではなく、地球規模の社会課題であることを感じた。
一般社団法人・日本危機管理学会の活動や入会に関心のある方はホームページをご覧いただきたい(https://crmsj.org/)。
(写真)筆者 RICOH GR
米村 大介