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メタバースが実現するパラレルワールド

=貢献が期待される「自由視点画像」=

2021年12月17日

最先端技術

研究員
片桐 敬太

 2021年10月28日、インターネット交流サイト(SNS)最大手の米フェイスブック(FB)は社名を「Meta(メタ)」へ変更したことを発表した。FB創業者のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は「物語には常に次の章がある」と宣言。知名度抜群の社名をあえて変更する狙いは、事業の軸をSNSから仮想空間のメタバース(Metaverse)へシフトすることだ。

 メタバースは米SF小説「スノウ・クラッシュ」(ニール・スティーヴンスン著、1992年)に登場する架空の世界に由来。「超越した(=meta)」と「世界(=universe)」を組み合わせた造語である。昨今では、コンピューターグラフィックス(CG)で構築された三次元の仮想空間を指すことが多い。

 メタバースの代表例としては、旧FBが2021年8月に発表した「Horizon Workrooms」がある。これは、参加者がヘッドマウント・ディスプレー(HMD)を装着して共通の仮想空間へ入り、議論を戦わせるバーチャル会議システム。そこでは参加者が3Dモデルでデザインした自分の分身(=アバター)を送り込み、アバター同士が「対面」でコミュニケーションをとる。

 メタバースでは参加者があたかもその仮想空間の中に存在し、相手も目の前にいるかのような高い没入感を求められる。それによって、パソコンやスマートフォンの画面越しでは得られないような、現実に近いコミュニケーションを実現する。物理的な距離は関係ないため、遠く離れた参加者同士でも全く問題ない。

パラレルワールドとしてのメタバース

 メタバースは通常、コンピューターゲームのように現実には存在しない架空の空間として構築されることが多い。しかし、筆者はそれではなく、われわれが存在する現実世界を模した「パラレルワールド(並行世界)」としての将来性に注目する。

 CGの3Dモデルを使い、メタバースにパラレルワールドを構築できれば、単なるコミュニケーションツールの域を超える。企業の研究開発や軍隊の作戦計画などにおけるシミュレーションに活用することも期待できる。現実世界ではコスト面から、あるいは倫理上困難な実験でも可能になる。

 ただしパラレルワールドを構築するためには、「三次元復元」技術が不可欠になる。その手法は、①復元したい現実の対象物を複数の地点から撮影した画像を用いる②対象物へのレーザー光照射で測距する―に大別される。また、この2つを組み合わせたハイブリッドな手法もよく用いられる。

 今回、筆者は①の手法で旧貨客船「氷川丸」(横浜市・山下公園)の三次元復元を試みた。利用したオープンソースは「COLMAP」(Copyright (c) 2018, ETH Zurich and UNC Chapel Hill、ソースコードはhttps://github.com/colmap/colmap)。また、動画はオープンソースの3Dビューワ―「MeshLab」(ISTI - CNR Visual Computing Lab)を用いて作成。スマートフォンを使って画像を39枚撮影した。

写真スチール写真
(写真)筆者

スマホで撮影の画像39枚を基に三次元復元した動画

視点からの映像が滑らかに移動する!

 動画を見て分かるように、船の外観はある程度三次元復元できた。一方、どの撮影地点からも観測できない領域や、複雑な形状をした領域はうまく復元できない。となると、多数の物体で構成される空間、まして地球規模の領域を復元することは可能になるのだろうか。今回、コンピュータービジョンを研究する滋賀大学の佐藤智和教授に見解を聴いた。

 佐藤教授によると、「Google Earth」に代表されるように、現在の技術でもある程度のパラレルワールドを完全自動で三次元復元できるようになった。だがGoogle Earthの場合、上空から撮影された画像を用いて復元するため、復元対象を近くで見ると粗が目立ち、高品質で復元することは困難だと指摘される。高品質の復元には対象をいろいろな角度から網羅的にセンシング(撮影やレーザー測距)することが必要になるが、現時点では至難の業だ。

 しかしながら、佐藤教授は「必ずしも現実世界を高品質で三次元復元する必要はない」とも指摘する。例えば、自動車同士の衝突など物理的な接触を必要とするシミュレーションの場合、三次元復元による高品質な3Dモデルが不可欠になる。これに対し、空間を視覚的な映像として単に見せたいだけなら、完全な三次元復元は必要ない。二次元映像を基にした画像合成でも代用できるからだ。もちろん映像には高品質が求められる。

 高品質の二次元映像を合成する技術としては、「自由視点画像」が脚光を浴びており、現在盛んに研究されている。最先端のアプリケーションとしては米アップルのストリートビュー「Look Around」があり、視点からの映像が滑らかに移動するため、利用者の没入感が高まる。

 このように、現状ではパラレルワールドを三次元復元することは容易ではない。しかし、パラレルワールドとしてのメタバースは段階的に進化を遂げると予測され、その第1段階では自由視点画像が大いに貢献すると筆者は期待している。

写真メタバースが実現するパラレルワールド(イメージ)
(出所)stock.adobe.com

片桐 敬太

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