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地域経済統計から探る再生可能エネルギービジネスの可能性

2018年08月29日

地球環境

主席研究員 則武 祐二
研究員 加藤 正良

 環境・資源・エネルギー研究室は先に研究論文「地域経済統計から探る再生可能エネルギービジネスの可能性」を作成した。この中ではまず、どのような地域(都道府県のレベル)でどのような再生可能エネルギービジネスを行うことが地方創生に貢献するかについて、統計データを使って一定の目途を付ける手法を検討している。全文をPDFで公開したので環境問題に関心のある方は是非ご覧いただきたい。

20180829_chiikikeizai.pdf

<< このペーパーのポイント >>

  1.  どのような地域(都道府県のレベル)でどのような再生可能エネルギービジネスを行うことが地方創生への貢献になるかについて、統計データを使って一定の目途を付ける手法を検討した。ここでは、地域経済の現状を把握するための指標として、①都道府県の経済全体を俯瞰するための「経済循環率」、②地域の社会生活の充実度を推し量るための「財政力指数」を採り上げた。両者には非常に緩やかながら正の相関があるように見受けられる。(本文I‐1)

    地域経済循環と財政力との関係

    20180829.JPG(出所)RESAS(地域経済分析システム)および総務省のデータを基に再編集

  2.  これら2指標でみると、東北・中国地方の県が多く含まれ、中小規模の人口を有する市町村を抱え地域経済の自立性が相対的に低いグループが抽出された。これらの県では、域内での付加価値生産(≒地域の稼ぐ力)が弱く、人口の減少・高齢化が進み、地域経済の自立性の強化が重要な課題となっている可能性がある。(本文I‐2)

  3.  政府の第5次環境基本計画では、こうした地域において、地域資源を活かし自立した分散型の社会を実現すること、近隣地域と地域資源を補完し支え合い「地域循環共生圏」を創造し地域の活力を最大限に発揮することが提言されている。上述の地域の稼ぐ力が弱く相対的に自立性が低いグループに属する県では、総じてエネルギー収支の赤字が目立つため、その改善が経済活性化に繋がる可能性がある。(本文II)

  4.  再生可能エネルギー関連設備等の新たな導入は、地域社会にとっての負担増にもなるので、その検討に当たってはリターンとコストの両方を考える必要がある。新たに生まれる再生可能エネルギービジネスが地域経済全体にどのような波及効果を与えるかについては、産業連関表を使って分析することができる。再生可能エネルギーの導入に対する便益性については、厳密には将来の温暖化対策の費用の低減効果も勘案する必要がある。(本文III‐1)

  5.  森林率や風力ポテンシャルといった地域の再生可能エネルギー資源の状況を示す指標と各都道府県の財政力指数との間にはある種の関係があり、それら自然資源の利用による再生可能エネルギービジネスが地域経済を活性化させる可能性を示唆している。(本文III‐2)

  6.  木質バイオマス発電のビジネスモデルを例に、具体的に経済波及効果の試算を高知県に対して行った。(本文III‐3)

研究員 加藤 正良

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