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三愛石油が「三愛オブリ」に社名変更へ

=航空燃料給油システムから風力発電向けサービスにも注力=

2022年03月14日

地球環境

研究員
河内 康高

 リコー三愛グループで石油製品などの販売を担う三愛石油(本社東京都千代田区)は2022 年 4 月 1 日付で「三愛オブリ株式会社」に社名を変更する。同社は 2002 年からコーポレートブランドとして「Obbli(オブリ)」を掲げる。ラテン語の「結び付ける」という意味からつくられたオリジナルの言葉で、人々や社会とのつながりを大切にし、深めていくという思いが込められている。

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三愛石油のコーポレートブランド「Obbli」
(提供)三愛石油

国内初、羽田空港に「ハイドラントシステム」導入

 三愛石油は 1952 年に創業し、2022 年 6 月に 70 周年を迎える。1955 年、創業者・市村清の考案で、羽田空港(東京国際空港)において地下パイプラインを経由し燃料を航空機の真下まで圧送(=ポンプなどで圧力を掛け、液体などを移動させること)する「ハイドラントシステム」を日本で初めて導入した。

図表

ハイドラントシステム(イメージ)
(出所)三愛石油を基に筆者

 当時は、手押しポンプを使ってドラム缶から航空機へ給油していた。しかし、ハイドラントシステムの導入により、給油業務の大幅な効率化と一度に大量の燃料を給油することが可能となった。以後、国内主要空港(新千歳、成田、中部、関西の各空港)や、タイやベトナムなどの空港が同システムをモデルとして採用する。

写真

ハイドラントシステムでの給油作業
(提供)三愛石油

 こうして三愛石油は、祖業の航空燃料取扱事業で盤石な地位を築き上げた。さらにそこで培った知見・ノウハウを基に、石油・LPガス・化学品・天然ガス事業を拡大し、成長を続けてきた。

風力発電向けのメンテナンスサービスを拡大

 ではなぜ今回、三愛石油は長年親しまれてきた社名を変更するのか。その背景には、事業環境の変化がある。身を置くエネルギー業界は「2050年カーボンニュートラル」への潮流が加速するなど、大きな転換期を迎えている。負荷の少ない「次世代エネルギー」への要請が高まる中、未来を見据えた「新たな事業領域への挑戦」を社内外に示す狙いがある。

 社名変更に先立ち、同社は 2021 年 8 月、中期経営計画(2021~23 年度)を発表。「変貌する未来への挑戦 Challenge 2030」と名付け、基幹事業の効率化と事業間の連携強化を図るとともに、成長事業に注力する方針を打ち出した。その 1 つが、風力発電向けのメンテナンスサービスである。

 脱炭素化の潮流の中で、日本でも風力発電設備の導入は右肩上がりで増えている。ただしその設置場所は、人里離れた山岳地帯や沿岸部などが多い。風車の安定運転に欠かせないメンテナンスも容易ではない。

 三愛石油はそれに着目し、風力発電向け潤滑油を供給するだけでなく、内視鏡カメラを使用した風車心臓部の点検サービスの提供などソリューションビジネスを展開している。今後はこうしたメンテナンスサービスを拡充し、お客様の風力発電施設運営を総合的にサポートする O&M(オペレーション・アンド・メンテナンス)サービスの領域を広げていく。

風力発電設備の導入量

図表(出所)日本風力発電協会を基に筆者

「人々の生活と産業を支えるパートナー」を目指して

 このほか、水素ステーションの建設や水素燃料インフラの整備、バイオマス発電向け O&M サービス、太陽光発電事業など、次世代エネルギー社会の実現に向けて包括的な取り組みを推進する。

 三愛石油人事総務部広報課の大谷菜々美さんは、社名変更について「変化が著しいエネルギー業界の中にあっても、わたしたちの価値観を示す『オブリ』は不変的なものとして社名に冠することにしました」と語る。

写真

三愛石油人事総務部広報課の大谷菜々美さん
(写真)筆者

 三愛石油は、グループ会社8社も同時に社名を変更、経営理念である三愛精神(=人を愛し、国を愛し、勤めを愛す)を軸に新たなスタートを切る。前出のコーポレートブランド「Obbli」が意味する「顧客、地域、社会と共に、良い関係を結んでいく」ことを決意し、「人々の生活と産業を支えるパートナー」となることを目標に掲げた。それはこれからも揺らぐことなく、「三愛オブリ」は社会とエネルギーの橋渡し役を担い続けるだろう。

河内 康高

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