Main content

支持率・失業率でみる戦後の米大統領選(第4回)

=ブッシュ(子)、オバマ、トランプ各大統領=

2020年08月21日

内外政治経済

研究員
芳賀 裕理

 第4回は2001~2020年のブッシュ(子)、オバマ、トランプの各大統領をとり上げる。米国は9.11同時多発テロやリーマン・ショックを乗り越え、戦後最長の景気拡大を実現した。ところが、足元では新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、失業率が第二大戦後最悪の水準まで上昇。こうした中で、2020年11月3日に大統領選を迎えることになる。

大統領支持率と失業率(注)ピンク線は大統領選投票日
図表(出所)支持率は米ギャラップ社、失業率は米労働省

⑩第43代大統領ジョージ・W・ブッシュ(共和党、コネチカット州出身、在任2001年1月~2009年1月)

写真(出所)ホワイトハウス公式サイト

 ブッシュ(子)氏は第41代大統領ブッシュ(父)の長男。エール大学卒業後、石油開発会社を興して成功を収める。大リーグのテキサス・レンジャーズの共同経営者を経て、テキサス州知事に転じた。2000年大統領選では、「思いやりのある保守主義」を掲げて出馬。大激戦の末、民主党のゴアを破り、共和党の政権奪還を実現した。

 2001年1月の就任早々、ブッシュ(子)氏は10年間で1兆3500億ドルに上る大型減税など、選挙公約を大胆に実行に移す。温室効果ガスの排出削減義務を定めた京都議定書からの離脱を突然発表するなど、保守色の強い単独主義が目立った。このため就任早々、国民の間では反ブッシュの空気も強まっていた。

 ところが同年9月11日、様相は一変する。イスラム過激派による同時多発テロが発生したのだ。ニューヨークの世界貿易センタービル2棟と首都近郊の国防総省ビルに、テロリストの乗っ取った航空機が激突し、多数の犠牲者を出すという前代未聞の事件である。

 国民はかつてない衝撃を受け、一致団結した。ブッシュ(子)氏は対テロ戦争の指導者となり、40%台まで低下していた支持率も一時90%に迫る水準にまで急上昇。圧倒的な支持を背景に、ブッシュ(子)氏はアフガニスタンにおけるイスラム原理主義勢力「タリバン」打倒を打ち出す。同時多発テロのウサマ・ビンラディン首謀者を追跡する軍事作戦を展開した。

 2002年1月の一般教書演説でブッシュ(子)氏はイラン、イラク、北朝鮮を名指しで「悪の枢軸(Axis of Evil)」と非難し、軍事行動をエスカレート。2003年3月、国際世論の反対を押し切ってイラク開戦に踏み切る。バグダッド陥落後、戦闘終結を宣言し、父の仇敵であるイラクのフセイン大統領の身柄を拘束した。

写真対イラク開戦直後、厳戒態勢のホワイトハウス
(写真)中野 哲也

 だがその強硬な単独主義は米国内からも批判を浴び、支持率は2004年大統領選直前に30%を割り込んだ。しかし、米経済は堅調で失業率も5%台を維持したため、ブッシュ(子)氏は民主党のケリー氏を激戦の上に破り再選に成功した。

写真ブッシュ(子)大統領と小泉純一郎首相(当時)
(写真)中野 哲也

⑪第44代大統領バラク・H・オバマ(民主党、ハワイ州出身、在任2009年1月~2017年1月)

写真(出所)ホワイトハウス公式サイト

 オバマ氏は父がケニア人、母がカンザス州出身の白人という、初のアフリカ系アメリカ人(=黒人)の大統領。コロンビア大学やハーバード大学法科大学院で学んだ後、シカゴで弁護士として活動。1996年にイリノイ州上院議員に当選して政界デビューを果たす。2004年には連邦上院議員に当選し、ブッシュ(子)政権下で低迷していた民主党の「希望の星」となる。

 「Change(変革)」を掲げて2008年大統領選に出馬。ヒラリー・クリントン氏を相手に熾烈な民主党指名争いを勝ち抜き、本選では共和党のマケイン氏に圧勝した。

 当選2カ月前、「100年に1度の経済危機」と呼ばれたリーマン・ショックが発生。雇用不安が拡大し、「変革」を掲げるオバマ待望論が一気に強まっていた。就任時の支持率は68%。を記録。第二次大戦後では、ケネディ氏の72%に次ぐ2番目の高さを誇った。

 それを背景に、リーマン対策として打ち出した過去最大規模の7870億ドルに上る大型景気対策も、わずか1カ月で議会承認を取り付け、好調なスタートを切った。2009年10月には、「核なき世界」実現を訴える姿勢が評価され、就任後1年足らずでノーベル平和賞を受賞した。

 また、低所得者向け高金利型住宅ローン、いわゆる「サブプライムローン」の返済に苦しむ人々に対し、低利ローンへの切り替えを含む救済策を断行。さらに、経営破綻した大手自動車メーカー、ゼネラル・モーターズ(GM)を事実上国有化した上で再生させるなど、「大恐慌再来」を何とか回避した。

 こうした巨額の財政出動によって、一時10%近くにまで上昇していた失業率の悪化にブレーキが掛かり、緩やかながら景気は回復に向かう。ただし、金融機関規制や環境保護政策などでは野党共和党の抵抗に遭い、オバマ氏の政権運営は必ずしも順調とはいえなかった。

 その一方で、世論の「Change」に対する期待は根強く、50%超の支持率を維持したまま2012年大統領選に突入。失業率はリーマン・ショック後の10%から8%近辺にまで低下し、雇用改善が追い風となり、共和党のロムニー氏を退けて再選を果たした。

 外交面ではブッシュ(子)前政権が「悪の枢軸」と非難したイランとの関係改善に乗り出し、核開発停止を条件に経済制裁を解く「イラン核合意」を実現した。1960年以降、関係断絶していたキューバとの国交回復にも努めるなど、国際緊張の緩和に尽力した。地球環境問題ではパリ協定に署名するなど、前政権とは対照的な業績を残した。

⑫第45代大統領ドナルド・J・トランプ(共和党、ニューヨーク州出身、在任2017年1月~)

写真(出所)ホワイトハウス公式サイト

 トランプ氏は就任時最高齢(69)の大統領。ペンシルバニア大学ウォートンスクール卒業後、父から不動産事業を受け継ぎ、主にニューヨーク市内でビジネスを拡大した。高層ビルやホテル、カジノ、ゴルフコースなどに「トランプ」の名を付け、ブランド化する。テレビ番組の司会として人気を博し、「You're fired!(お前はクビだ)」という決めゼリフが流行語に。

写真トランプ氏が経営していたカジノホテル(米ニュージャージー州アトランティックシティー)
(写真)中野 哲也

 2016年大統領選に共和党から出馬すると、大方の予想に反して民主党のヒラリー・クリントン元国務長官を破り、サプライズ当選を果たした。

 大衆迎合の「ポピュリスト政治家」と称されても、トランプ氏はツイッターを駆使しながら、歯に衣着せぬメッセージを送り続ける。敵味方をはっきり区別し、国民分断も辞さない姿勢を貫く。躊躇(ちゅうちょ)なく側近も切ってしまう非情な人事も、批判を浴びた。ただし、トランプ支持者の熱狂ぶりは群を抜いており、他の政治家の追随を許さない。

 経済政策では大型減税などが奏功し、2017年1月の就任からの3年間で就業者数を約700万人増やした。失業率も2020年1月には3.5%と50年ぶりの水準にまで低下。トランプ政権下で米国の景気拡大は過去最長の11年目に突入した。経済堅調を背景にトランプ氏は「Make America Great Again(米国を再び偉大な国に)という公約を掲げ続け、2020年11月の大統領選再選に自信を深め始める。

 その矢先、新型コロナウイルスが米国に襲来し、世界最多の感染者が発生する危機に陥った。2020年4月の失業率は戦後最悪の14.7%まで急上昇した。トランプ政権は2兆9000億ドル(約305兆円)に上る対策を決定したが、ロックダウン(都市封鎖)から経済再開の局面に入っても、2ケタの失業率が続く。経済再開を急いだ結果、感染者数が再び増勢に転じる。トランプ氏の支持率は2020年1月の47%から、7月には41%まで低下した。

 また、黒人男性が白人警察官に殺害される事件をきっかけに、「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)」と呼ばれる抗議運動が急激に拡大した。トランプ氏が軍隊をデモ隊に差し向ける意向示したため、運動は一段と過熱。保守支持層や与党共和党の一部も動揺を見せたことから、支持率では民主党大統領候補のバイデン前副大統領に8ポイント程度の差を付けられている。

 第2次大戦後に現職大統領が敗北したケースは1976年フォード氏、1980年カーター氏、1992年ブッシュ(父)氏の3例しかない。いずれも選挙直前の失業率が7%を超え、支持率は50%を割り込んでいた。再選を目指すトランプ氏は現時点で両方当てはまり、黄信号が点灯した状況にあると言えるだろう。

現職が挑んだ大統領選の結果

図表(出所)支持率は米ギャラップ社、失業率は米労働省


【参考文献・資料】
米ギャラップ社・世論調査結果
米労働省・雇用統計
「アメリカ史(上)」(紀平栄作編、山川出版社)
「アメリカ史(下)」(同)
「大統領でたどるアメリカの歴史」(明石和康 著、岩波書店)
カリフォルニア大学サンタバーバラ校「The American Presidency Project」
ホワイトハウス公式サイト
日米の各種報道など

写真

《関連記事》
◎支持率・失業率でみる戦後の米大統領選(第1回)
 =アイゼンハワー、ケネディ、ジョンソン各大統領=
◎支持率・失業率でみる戦後の米大統領選(第2回)
 =ニクソン、フォード、カーター各大統領=
◎支持率・失業率でみる戦後の米大統領選(第3回)
 =レーガン、ブッシュ(父)、クリントン各大統領=

芳賀 裕理

TAG:

※本記事・写真の無断複製・転載・引用を禁じます。
※本サイトに掲載された論文・コラムなどの記事の内容や意見は執筆者個人の見解であり、当研究所または(株)リコーの見解を示すものではありません。
※ご意見やご提案は、お問い合わせフォームからお願いいたします。

戻る