人口減少への適応とコンパクトシティー再起動
2025年国勢調査の確定値が公表された。日本の総人口は1億2297万人で、20年から317万人(2.5%)減った。減少数・率共に過去最大だ。人口が増えたのは東京都だけで、市町村の9割以上で人口が減った。減少率が10%以上の市町村は全国の約3割に及ぶ。

人口減少自体が悪いわけではない。人口が少なくても、一人ひとりが豊かで幸せに暮らせるなら問題はない。しかし、日本の社会制度や国土構造の多くは、人口増加を前提に築かれてきた。住宅地は郊外へ広がり、道路や上下水道、学校、病院などが面的に整備されてきたが、人口密度が下がれば、こうした仕組みの維持は難しくなる。
これまで各自治体は地方創生として、企業誘致や観光振興、移住促進などにより、人口減少を食い止めようとしてきた。だが、全国の人口が減る中で各自治体が人口増加を目指せば、住民や企業の奪い合いになりやすい。政府による地方創生10年の総括でも「地域間での『人口の奪い合い』」が指摘されている。少子化対策など人口減少を食い止める「緩和策」は必要だが、人口減少を前提に社会を作り替える「適応策」も同時に進めなければならない。
その具体的な手段が、コンパクトシティーだ。住宅や医療、商業、公共施設を拠点や公共交通の沿線に集約し、利便性を保ちながらインフラの維持費を抑える。必要であれば市町村の枠を超え、生活圏全体で取り組むべきだ。
しかし、国勢調査の「人口集中地区」は5年前に比べて人口が0.65%減った一方、面積は0.36%増えており、コンパクト化は十分に進んでいない。そもそも施設の統廃合や居住誘導には住民の利害が絡む。例えば、複数の病院を統合して医師や設備を集約すれば医療を高度化できるが、病院を失う自治体は容易には賛成できない。
では、どうすればよいか。第一に、何もしなければ将来の負担がどれだけ増えるのかを可視化することだ。例えば、過疎化が進む北海道夕張市の家庭用水道料金は、全国平均の2倍を超える。将来の負担増やサービス低下を具体的に示すことが、住民の理解につながる。
第二に、縮退後の将来像を併せて示すことだ。空き地を農地や公園、森林などに転換し、生活環境や防災力の向上につなげれば、縮退は前向きな色彩を放つ。
第三に、市町村任せにせず、国や都道府県が積極的に関与することだ。国は法制度や財政支援を整え、都道府県は生活圏全体を見渡して自治体間の利害を調整する必要がある。
同時に、地方創生の物差しも変えるべきだ。「人口を何人増やしたか」ではなく、「住民の所得や医療・交通へのアクセス、生活の満足度などを高められたか」で評価すべきだ。
国立社会保障・人口問題研究所が今後改定する将来人口推計で、日本人人口は出生数の急減を踏まえ、大幅に下方修正されるだろう。政府は新たな推計を現実的な前提として受け入れ、経済・社会政策を再設計する必要がある。人口を増やす地方創生から、人口が減っても生活の質を高める地方創生へ──。人口減少に「抗(あらが)う」だけでなく「適応する」政策への転換と、コンパクトシティーの再起動が求められている。
「週刊金融財政事情」2026年10月20日号(https://kinzai-online.jp/node/14932)に掲載、イラストはAdobe Stockより
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