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町工場と地域住民の共存を目指す大田区製造業

大田区製造業の動向(下)

2017年02月13日

地域再生

研究員
可児 竜太


人の輪が生み出した東京・下町の「仲間まわし」=大田区製造業の動向(上)=に続き、公開します。




 まちづくりの観点から製造業の再生を図るべく、東京・大田区では地域住民との交流も始まっている。そのような取組みの一つである地域交流拠点「くりらぼ多摩川」を訪問し、技術部長の泉昭子さんに取材した。

 一般社団法人大田区観光協会が2013年に大田区矢口の工場長屋に開設した同拠点では、ものづくりの体験イベントや町工場で働く人々の講演会などを開催している。地域住民が大田区の製造業を知り、身近なものとして感じることができる「場」を提供しているのだ。


20170209kani.jpg左/くりらぼ多摩川(事務所棟)、右/泉昭子技術部長

 おおたオープンファクトリー実行委員会の主催で年に一度開催している「おおたオープンファクトリー」では、くりらぼが多摩川エリアの拠点になる。2012年から開催されているこのイベントでは、普段は立ち入りが難しい町工場を見学したり、職人から機械や技術について紹介を受けたりできる。

 2016年初冬に開催された第6回おおたオープンファクトリーでは、おおたのものづくりの象徴である「仲間まわし」を実体験してもらおうと、多摩川エリアの複数の工場をまわりながら、材料に加工を施し、スマホスピーカーやミニカーを製作するラリーを開催。参加者は、各工場で職人たちが実際に加工機械を駆使してレーザー加工や切削したり、溶接したりする様子を間近で見学した。

 事務所棟にはカプセルトイの自動販売機が設置されていた。中には学生のデザインコンペで選ばれたアイデアを大田区の職人が形にした金属加工の小物が入っている。筆者が手に入れたのは、三分割されたアルミの「携帯箸」。70歳を超えるベテラン職人がベンチレースという加工機械で削り上げたもので、組み立てると継ぎ目が分からないほどに精巧な仕上がりだ。


20170209kani22.jpg左/携帯箸「大田の架け箸」、右/工場棟


 木造の長屋の雰囲気をそのままに残した工場棟では、2012年に放送されたNHKの朝の連続テレビ小説「梅ちゃん先生」にも使われた古い工作機械が展示されていた。毎週末になると、地域住民が工場棟に集い、ペーパークラフトや木工など思い思いの「ものづくり」を楽しんでいるという。

 工場長屋の裏手には古くから続く町工場が入居しており、壁の向こう側からは加工機械の力強い音が響いてくる。終戦直後には焼け野原であったこの地域に根付き、日本の高度経済成長を支えてきた職人たちの変わらぬ活気が伝わってくる。

 リコーもまた、60年以上の前から大田区に根付く「おおたの『ものづくり』」の一員である。常に変化を追求し続ける大田区製造業の一層の発展に寄与していければと思う。


【参考】 創造製作所くりらぼ多摩川(http://www.o-2.jp/mono/lab/

(写真)筆者

可児 竜太

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