2016年10月07日
社会・生活
主席研究員
中野 哲也
講演の依頼があり、8年ぶりに函館(北海道)を訪れた。北島三郎の大ヒット曲「函館の女(ひと)」が耳にこびりつき、われわれオジサン世代には「はるばる来たぜ~」のイメージが強烈だ。しかし、若い世代は何のことか分からないだろう。今や、飛行機なら東京・羽田空港からおよそ80分で着いてしまうからだ。今年3月には北海道新幹線が開業し、東京~新函館北斗間を最速4時間2分で結ぶ。「はるばる」という距離感たっぷりの副詞が、日本語の中で居場所を失いつつある。
函館といえば、神戸(兵庫県)、長崎(長崎県)と並ぶ日本三大夜景。ロープウェーに乗り、久しぶりに函館山(334メートル)の頂上を目指した。国慶節の旅行シーズンだから、中国からの団体客が大挙して押しかけ、展望台では撮影スポットをめぐって陣取り合戦。だが日が沈むと、だれもがうっとりとした表情に変わった。右手に太平洋、左手には日本海が広がり、それに挟まれた市街地が宝石のように輝きを放つ。眼前で奇跡のようなドラマが進行すると、人種や国籍を問わず言葉を失う。人と人の間には必ず共通する感情があり、国家対国家の緊張関係でもそれを活かしたいものだ。
函館山頂からの夜景
(撮影) 筆者
中野 哲也