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秘書の敵はだれか?それは油断です!

【企画室】 Vol.7

2017年01月10日

社会・生活

企画室
大林 裕子

 「仕事は慣れだから」という人がいる。確かに慣れてくれば、仕事の質が良くなり、知らず知らずのうちに沢山のノウハウも身に付いている。ところが...である。それで油断すると、慣れた仕事に限ってミスを犯してしまう。秘書という仕事を長い間続けてきた自分を振り返ると、数え切れないほど恥ずかしい失敗を繰り返してきた。油断の歴史と言い換えてもよいだろう。

 秘書に対して、「オシャレでカッコいい」というイメージを抱いている人もいるが、それはどうだろう?言うまでもなく、テレビドラマと現実は全く別物。だれでも秘書に本気で取り組めば、かなり大変な仕事だと感じるはずだ。まず、ボスが仕事に集中できるよう念入りに準備し、日々の様子で体調の良し悪しを感じ取る。何でもないような小さなことがとても大切であり、手抜きは許されない。ボスの好みはもちろん最大限尊重する。とはいえ、周りの役員との関係も考慮しなければ、失礼になってしまう。色々気遣うことは多いが、余計なお世話になってもいけない。このさじ加減が難しい。おもてなしも行き過ぎるとお節介になってしまうのと同じである。

 こうした小さな努力の積み重ねは、周囲の人からは理解されないことが多い。だから、若い秘書の中には深刻に悩む人も少なくない。私も昔はひたすら時間に追われ、目の前のことしか見えなかった。準備は中途半端になり、ボスに怒鳴られてばかりいた。相談できる先輩や仲間がいなくて独り悩んでいたら、体調を崩して会社を長期休んでしまった。

 そんな時、職場の秘書仲間から、「自分はこの仕事に向いていないから、やることを書き出してマニュアルみたいなものを作ってみた」と聞いた。藁(わら)にもすがる思いで早速、自分も真似してみた。チェック表を作って確認しながら仕事をすると...。スピードが速くなっただけでなく、何とミスも減ってきたのだ。日々のチェック表のほか、ボスの会議や出張に合わせて表を作ると、 色々な場面で仕事がスムーズに進むのである。そのうち、私の頭の中にはチェック表が自然と浮かび上がり、それによってミスがますます減っていった。ちょっとした工夫で仕事の生産性が劇的に改善する―。という真理を発見した自分に私は驚いた。

 ただし、だんだん齢を重ねていくと、今度は「度忘れ」という難敵が出現するようになった。そして自分を「ベテラン秘書」と過信すると、必ず大きな失敗をしてしまう。若い頃とは違い、頑張り続けてきた上での失敗はダメージが大きい。こういう時は原点、すなわちチェック表に返るしかない。これからも質の良い仕事を心掛け、後輩から憧れてもらえる存在でいたい。今日も慣れた仕事こそ、油断しないように...

R0010684rrr.jpg日常管理に利用するスケジュール

(写真)小笹 泰

大林 裕子

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