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「アメリカ」という単語は何を指す? =言葉のニュアンスって難しい=

2017年02月17日

社会・生活

研究員
木下 紗江

 以前、海外事情に詳しい友人と話をしていた時のこと。「今度、長期休暇を取得したらアメリカに行ってみたいな」とか、「アメリカでは今こんなものが流行っていて、今度日本にも初出店するらしいよ」―。などと威勢よく『アメリカ』『アメリカ』と連呼していたら、友人がさらっと一言。「ちなみにさ、むこうでは"アメリカ"のこと、『アメリカ』って言わないよ。『ユーエス(US)』って言うの」―

 どうやら「アメリカ」というと、カナダやメキシコ、グアテマラ、ニカラグア、コロンビア、ブラジル、チリ、アルゼンチン、さらにはキューバやプエルトルコといったカリブ海の島々まですべて含めた、アメリカ大陸を指すらしい。決して、「アメリカ」は、アメリカ合衆国という一国だけを指す言葉ではないようだ。

 確かに日本語にも、北米(North America)、南米(South America)、中南米(Central and South America)、ラテンアメリカ(Latin America)といった言葉がある。"米(アメリカ)"=アメリカ大陸。なのに、なぜか日本の学校教育ではずっと「アメリカ」=アメリカ合衆国と教えられてきた気がする。

 友人によると、アメリカ大陸の国々で「アメリカ」というと、アメリカ大陸だと誤解されてしまい、うまく話が通じなかったりするようだ。また、相手によっては、「アメリカ」をアメリカ合衆国だとして使われると、不快に感じる人もいるらしい。ただ、これらの話が本当なのかどうか私自身がきちんと確かめたことはないが、「アメリカ」という言葉はなんとも要注意な言葉であるようだ。こういった微妙なニュアンスというのはとても難しい。

 考えてみれば、これは外国人にとっての日本語も同じことだろう。私が高校生だった頃、近所に住む親戚の家に、マレーシアからの留学生がホームステイしていた。「日本が大好き」という彼女は、年齢が近かったこともあり、時折私の家に遊びに来ることがあった。家で一緒に遊んだり、おしゃべりをしたり、ご飯を食べたりすることもあれば、一緒に街に出掛けてプリクラを撮ったりした。当時の一般的な日本の女子高校生がやっているような遊びである。

 彼女はとても真面目で、もともと母国で日本語を勉強していたそうで、既に日本語が上手だった。ただ、そんな彼女が、特に苦労していたのが、日本語のものの数え方。といっても、勉強熱心な彼女は、「1(いち)、2(に)、3(さん)、4(し)・・・」という数え方はもちろん覚えている。その上、彼女は「1つ(ひとつ)、2つ(ふたつ)、3つ(みっつ)、4つ(よっつ)・・・という数え方も知っているよ」とにっこりと笑うのである。もう、ものの数え方はばっちりではないか。

 ところが、ご飯を食べるとき、お箸の数え方は「一膳、二膳、三膳・・・」、ものを書くとき、鉛筆の数え方は「一本、二本、三本・・・」、庭に遊びにきて戯れている猫を数えるときは「一匹、二匹、三匹・・・」。これには、彼女も次から次に覚えるものが増えて、何がなにやらといった感じで、とても苦労していた。

 このようにものの数え方が複雑なのは、日本特有らしい。洋服を買う時に「このTシャツを1つください」というのは変だし、本を買う時、「この本を1つください」というのも変だ。日本人は、家庭や学校教育の中で、少しずつ物の数え方を習得していくが、外国人にとってこれら一つひとつを覚えていくのは、至難の業のようだ。

 現地の言葉の微妙なニュアンスをきちんと理解して、適切に使い分けるというのは本当に難しい。と思っていたら、今年1月に米大統領に就任したトランプ氏が掲げるスローガンは「Make America Great Again」と「America First」―。あれ、しっかり「アメリカ」って使ってる。

20170210kinoshita.JPGアメリカの象徴「リバティ・ベル」(米ペンシルベニア州フィラデルフィア)

(写真)中野 哲也

木下 紗江

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