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恐竜の時代へタイムスリップ!化石発掘体験も楽しい

=福井県立恐竜博物館を訪問=

2017年10月12日

社会・生活

企画室
竹内 典子

 山口県下関市で1965年に採集された岩石が実は、国内で最初に発見された恐竜の卵の化石だったことが明らかになった。その共同調査を主導した福井県立恐竜博物館が、7月14日~10月15日、特別展「恐竜の卵~恐竜誕生に秘められた謎~」を開催すると聞いて取材に向かった。この博物館は恐竜化石の宝庫として有名な福井県勝山市の「かつやま恐竜の森」にある。2000年に開館し、国内外から年間90万人を超える人が訪れる。今ではカナダのロイヤル・ティレル古生物学博物館、中国の自貢恐竜博物館と並んで「世界三大恐竜博物館」の一つに数えられる。

 営業推進課主任の千秋利弘さんに館内を案内していただいた。エントランスは3階にあり、長さ33メートルのエスカレーターでゆっくり降りていくと、まずは「ダイノストリート」。壁に太古の化石が絵画のように並べられ、まるで美術館の中のようだ。およそ2億7000万年前の古生代の小さな足跡が並ぶ化石の前で足を留めていると、「化石は骨ばかりではなく、足跡もあるんです。実物の化石を身近に感じてもらうため、あえて柵は取り付けていません。お近くでどうぞ」―

 そこから階段を上がると、屋根が丸くて柱の無い広大な展示室があり、見渡す限り恐竜の世界が広がっていた。全長7メートルもある人気者の「ティラノサウルス」のロボットが出迎えてくれ、鋭い歯を見せながら、「ガオーッ」と低い唸り声を上げる。今にも襲ってきそうな迫力だから、驚いて泣き出してしまう子供もいるという。

博物館の入口

ダイノストリート

 体の大きさや関節の動き方は正確に復元できたが、実は動くスピードや体の色、鳴き声はまだ解明されていない。イメージで製作するしかなく、千秋さんは「世界中で毎週のように恐竜の情報は更新されており、通説が覆されるような発見も珍しくありません。例えば、ティラノサウルスの幼体には羽毛が生えていたという説もあります」という。もちろんティラノサウルスの化石も展示されている。

20171012_03.jpgティラノサウルスがお出迎え

 また、福井県内で発見された恐竜化石のコーナーもある。恐竜は約2億3000万年前に誕生し、約6600万年前に絶滅したといわれる。福井、富山、石川の各県に広がる手取(てとり)層群というジュラ紀~白亜紀(1億5000万年~1億2000万年前)の地層では、フクイティタンやフクイラプトルなど5種類の新種の恐竜化石が発掘された。館内には44体もの恐竜の全身の骨格が展示されており、一つずつ見ているとあっという間に時間が過ぎてしまう。

20171012_04.jpg福井県で発見されたフクイラプトル

20171012_05.jpg2階から「恐竜の世界ゾーン」を望む

 恐竜の世界を体感できるコーナーもあり、200インチ対面スクリーンの「ダイノシアター」は迫力満点だ。肉食恐竜が草食恐竜に襲いかかるシーンでは、恐竜が左から右のスクリーンにジャンプ!頭上を越えていくからヒヤッとする。その奥には、中国四川省で発掘された恐竜が主人公のジオラマがあり、太古の時代を実物大で体験できる。千秋さんが「よく見ると隠れキャラがいますよ」と指差す先には、ワニやカメなどが潜んでいた。

 今回の特別展「恐竜の卵~恐竜誕生に秘められた謎~」では、世界各地から恐竜の卵や巣の化石が集められ、恐竜がどのように子孫を増やし、長い間繁栄したのかが分かりやすく解説されていた。恐竜の卵はニワトリに似たもののほか、細長い楕円形やまん丸い球状などバラエティーに富む。最大50センチ程もあるが、必ずしも成体の大きさに比例しないそうだ。また、恐竜は巣を作って産卵したと推測されている。親子一緒の状態の化石も見つかっており、子育てもしたらしい。

 冒頭で紹介した下関市で見つかった恐竜の卵の化石に関しては、発見当時のスケッチなどが展示されていた。「恐竜は日本にはいない」と言われていた半世紀前、「もしかしたら、これは恐竜の化石かも...」と夢を膨らませながら、必死にスケッチをしていた高校生の姿が頭の中に浮かんできた。

 恐竜にとって一番の理解者は、人間の男の子かもしれない。図鑑や映画などを通じて興味を持ち、大人になっても恐竜ファンを続ける人も少なくない。その秘密を千秋さんにうかがった。「恐竜はだれも見たことがないけれど、空想の生き物ではなく、確かな存在を示す化石という証(あかし)があります。だから想像力をかきたてられるのでしょう。また、現在進行形で研究成果が続々と発表され、謎が一つずつ解き明かされる楽しみもあるため、人気が根強いのかもしれません」―

 最後に、化石発掘を現場で体験できる「野外恐竜博物館ツアー」に参加した。専用バスで博物館から30分ほど離れた発掘現場へ向かう。そこには実際の発掘現場から岩石を運んできた広場が設けられ、岩石をハンマーでたたいて恐竜の化石を探す体験ができる。

 研究員から「岩石は固いので無理に大きな石を割ろうとしないこと。化石の含まれている石は黒っぽいことが多く、日光でキラキラと光ることが多い」などと説明を受け、ゴーグルと軍手を装着する。いよいよ発掘が始まると、参加者は大汗をかきながら、何度も何度もハンマーを振り下ろす。大人も子供も関係ない。表情は真剣そのものだ。「これは!」と思った石は研究員に判定してもらう。

 筆者も小さな二枚貝の化石を発見できた。ここの地層はおよそ1億2000万年前のもの。太古から地中で眠り続けていた二枚貝が21世紀の空気を吸い込み、息を吹き返したかのようにキラリと光った。発掘体験では、小さな貝や植物の化石が見つかることが多いが、運が良ければワニや恐竜の一部が発見されることも...。歴史を引っくり返す貴重な化石が見つかるチャンスは常にあり、次の発見者はあなたかもしれない。

営業推進課主任の千秋利弘さん

化石の発掘体験は真剣勝負



◆福井県立恐竜博物館
住所:福井県勝山市村岡町寺尾51-11 かつやま恐竜の森内
TEL:0779-88-0001
https://www.dinosaur.pref.fukui.jp/
*野外恐竜博物館ツアーは事前予約が必要


(写真)筆者 PENTAX K-50

竹内 典子

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※この記事は、2017年9月29日発行のHeadLineに掲載されました。

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