2018年04月19日
社会・生活
企画室
新井 大輔
企業の人手不足はより一層深刻化しているようだ。日本銀行が4月2日に発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、雇用判断指数(DI=「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業を引いた値)は、全規模・全産業でマイナス34となり、前回12月調査に比べて、2ポイント悪化した。人手不足はリーマンショック前の水準をはるかに超えて、バブル経済期の水準にまで迫っている。
人手不足と並行して企業で進行しているのが、急速なデジタル化であろう。人工知能(AI)やIoT、ロボティクスなどの単語を新聞やニュースで見ない日はないくらいだ。だから筆者は企業のデジタル化の主たる目的は、人手不足対策としての省力化や効率化だろうと思っていたが、実態はどうも異なるようだ。
経済同友会の第124回景気定点観測アンケート調査結果を見ると、その実態が如実に浮かび上がる。企業がデジタル化の進展の下で注力したり、留意している点を尋ねた質問に対し、「省力化・効率化」を挙げた企業は、全回答170件中18件と約1割に過ぎなかったのだ。一方、「ビジネスモデルの構築」を挙げた企業は、36件と約2割を占めた。省力化・効率化を「守り」の投資とすると、ビジネスモデルの構築は「攻め」の投資と言えるだけに、企業が前に踏み出そうとしている姿勢がうかがえる。
ただもっと興味深かったのは、「組織対応の推進」に注力・留意していると答えた企業が最も多く、全体の約4分の1を占めたことだ。中身を見ると、専門組織の設置やデジタル責任者の設置、経営陣の理解を得る。などとなっている。見方を変えると、攻める前の準備・検討段階であり、多くの企業では、デジタル化はいまだ離陸前の状態にあると言えるのだろう。
(出所)経済同友会「第124回景気定点観測アンケート」を基に筆者作成
なぜなのか。同アンケートには、その原因が類推できる質問・回答がある。デジタル化を進める中で、各企業が挙げた直面する問題点がそれだ。「人材・ノウハウ・スキル不足」を挙げる企業が、全回答159件中68件と4割強を占めた。技術者の不足が目立ち、経営者や中間管理職のスキル不足を挙げる企業もある。次に多かったのは約2割の「組織対応や意識の問題」で、従業員意識の低さに関する回答が目立つ。2つの回答を合わせると、実に約6割の企業が「人」に関する問題を抱えていることになる。デジタル化が進む中、肝心の人間がアナログ状態のまま対応できないでいるとしたら、何とも皮肉な話だ。
(出所)経済同友会「第124回景気定点観測アンケート」を基に筆者作成
リコーでも、デジタル化の取り組みには力を入れており、最近、新たなコミュニケーションツールを導入したばかりだ。インターフェイスががらりと変わったため、いまだ慣れずに初歩的なことにつまずくことも多い。だが、新ツールには共同文書編集機能やオンライン会議、チャットなど先進的な機能が搭載されている。デジタル化時代においては、こうした新しいツールや機能をいかに使いこなすかが、カギになるのだと思う。その大前提として、利用する「人」が前向きな姿勢で取り組まねばならない。筆者も新ツールを駆使し、当社のデジタル化に貢献していきたいと思う。と、偉そうなことを書いてしまったが、まずは新しいツールに早く慣れて、効率的に仕事できるレベルを目指したい。
新井 大輔