2018年07月23日
社会・生活
企画室
大林 裕子
気象庁によると関東甲信地方の梅雨明けは平年7月21日ごろとされているが、今年は6月29日だったという。異常な早さだ。それに伴って気温もぐんぐん上昇し、最近は真夏日(最高気温30度以上)どころか、猛暑日(最高気温35度以上)になることも珍しくない。天気予報の数字を聞くだけでぐったりしてしまう。
そんなときは何かで暑さを忘れたいもの。思い返せば子どものころは、ホラー漫画が「清涼剤」だった。恋愛ものやスポ根漫画などに夢中になる女子が多い中、私がもっぱらはまっていたのは少女がクモやヘビに変身するようなストーリーだ。
夏休みの課題として学校推薦の文学書が紹介されると、まずは大好きなホラー漫画を手に取って読みふけったものだ。不思議なことに文学書だと暑さで集中力が途切れてしまうのに、ホラー漫画だと暑さを感じることはなかった。
漫画だけでなく、ホラー映画でも寒い思いをしたことがある。小学校高学年の夏休みに友人たちと映画を見に行き、なぜか「四谷怪談」を見る羽目になってしまい、あまりの怖さに泣きそうになったのだ。
海外のホラー映画は、怪物などが急に出てきて脅かすような物理的に迫って来る怖さがある。だが、日本のそれは、目に見えない空気感や音響効果で心理的に怖さを増幅させていく。見終わった後にも怖さが残る。子供のころは夏の夜には蚊帳を張って寝ていたが、昔の怪談映画などに蚊帳のシーンがよく出てきたのが頭にあったせいか、よく夢を見てうなされたりしていた。
大人になった今はミステリー小説も大好きだが、暑気払いにはやはり冷たいビールが手っ取り早い。心理面で肝を冷すよりも物理的に体を冷すほうが勝ってしまったと言うことか。暑気払いには体に溜まった熱気を払うという意味だけでなく、暑さで弱った体を元気にしようという意味があるそうなので、ビールの栄養を取り込むという点ではより語義に近いと開き直っている。
もっとも、ビールそのものよりは仲間内でわいわいやる瞬間が何よりもいい。であれば、暑さを忘れる手段が「怖さ」から「楽しさ」に変わっただけなのかもしれない。飲みすぎには注意だが、ビールはその「潤滑油」と心得て今年も暑気払いに精を出そう。
(写真)筆者
大林 裕子