2018年08月08日
社会・生活
企画室長
古賀 雅之
「落ち着いた空間で、お野菜作りはじめませんか?」―。一昨年の晩秋、週末の朝刊に折り込まれていたチラシが目に飛び込んできた。
それは、畑を借りて野菜作りを楽しめるレンタルサービスの広告だった。農具などは借りられるため、手ぶらで通うことができる。また、栽培経験豊富な菜園アドバイザーが助言してくれるから、初心者でも安心して野菜を育てられる。
何より関心を持ったのは、化学肥料を一切使わないこと。牛や鶏の糞、堆肥や油かすといった有機質肥料だけを使い、自然の力で野菜を育てるのだ。だから、旨みがギュッと詰まった野菜が収穫できる。
普段は何事にも慎重な筆者だが、何かの「衝動」に駆られたかのように、チラシを見てすぐに見学会に出掛ける。その場で契約を交わし、わずか3平方メートルとはいえ、生まれて初めて「マイ農地」を手に入れた。
その後、春夏野菜ではインゲンやエダマメ、キュウリ、ミニトマト、ナスなどに挑戦。トウモロコシはハクビシンに一本食われてしまったが...。
見事に育ったトウモロコシ
「ごちそうさま」byハクビシン
秋冬野菜ではダイコンやニンニク、サンチュ、ルッコラ、リーフレタスなどを栽培。ただ、家族全員で期待していたイチゴは想像以上に難しく、悔しい思いもした。今は9月上旬の収穫に向け、オクラの生長が最大の楽しみである。
初挑戦でも大成功を収めたダイコン
額に汗して耕しながら、ふと気づいた。畑は収穫だけでなく、「食育」の場なのである。実際、筆者が借りている畑では、子供連れのファミリーをよく見かける。耕作から種まき、収穫までの農作業や、自分で収穫した野菜を使った調理・食事といった体験を通じ、家族全員が学んでいるのだろう。
いつの間にか、筆者も食育を経験していた。遅ればせながら50代半ばで野菜づくりに挑戦し、「食」の難しさや楽しさを知ったのである。そして収穫した野菜はすべて、スーパーで買い求めたものよりも美味しく感じる。産地直送なので新鮮なのは当たり前。妻と一緒に苦労して育てた野菜を「美味しい!」と誉めてくれる、娘と息子の一言こそが最大の収穫である。
(写真)筆者
古賀 雅之