2018年10月04日
社会・生活
企画室
竹内 典子
武道といえば、空手、柔道、剣道、合気道...。いずれも道場で厳しい稽古を重ね、礼儀作法を学ぶという印象が強い。子供の頃から憧れはあったが、入門する勇気は生まれてこなかった。そんな折、ある情報サイトで日本発の武道をコンセプトにした新しいフィットネス「B.I.F BY NERGY(ビーアイエフ バイ ナージー)」が東京・原宿に登場するという記事を目にした。憧れの武道とフィットネスの組み合わせという斬新さに驚き、体験レッスンが受けられると知って足を運んだ。
B.I.Fは、武道から想起されたフィットネスを意味する「Budo Inspired Fitness」の頭文字で、アパレルブランド「NERGY」(株式会社ジュン)から誕生した。フィットネスとして楽しめるのはもちろん、「道」を追い求める精神も大切にしたプログラムが用意されている。空手家の宇佐美里香さんが公式アンバサダーとしてプログラムの開発から参画。宇佐美さんは2009年から全日本空手選手権大会で4連覇。2012年にはパリで開かれた世界空手道選手権大会で優勝を果たした実力者である。
JR原宿駅から徒歩5分。商業施設「原宿ゼロゲート」のエレベータを降りると、女性専用のフィットネススタジオらしくピンクを基調とした空間が広がっていた。笑顔で迎えてくれたのはインストラクターの睦貴(MUTSUKI)さん。宇佐美さんから直接指導を受け、二段を持つ実力者である。
早速、オリジナルの白い道着に着替え、ピンクの帯を結ぶと、身も心も引き締まる思いがした。プログラムは45分で構成されており、①美しい姿勢づくりのための入門編②全身のシェイプアップ効果の高い応用編③リフレッシュ効果にフォーカス―3種類が用意されている。空手初心者の筆者は迷わず入門編を選んだ。
プログラムは黙想から始まり、続いて拳(こぶし)の握り方を教わる。その後は基本の型を習う。左右交互に正面へ拳をひねりながら突く「順突き」や「横蹴り」など、いくつかの型を繰り返しながら覚えていく。我ながら何とか様になってきたかなと思ったところで、アップテンポな音楽に合わせて一連の動きを通していく。
練習風景
ここからは、フィットネスと武道との融合である。「一つ一つの動きに呼吸を合わせることを忘れずに」と睦貴さんからアドバイス。すると、初めは音楽に合わせてうまく動けなかったが、何度か繰り返すと型が決まる時もあり、気持ちの良い汗が流れ出はじめた。音楽に連動して動く天井の舞台照明も気分を盛り上げる。「最初は型を覚えるだけで精一杯でも、続けていくうちに次の段階に必ず進めます。自分を乗り越えていきましょう」と睦貴さんから声がかかる。最後は再び黙想を行い、気持ちを落ち着かせて道場訓をみんなで復唱する。「一つ人に優しく、一つ感謝の気持ちを忘れない、一つ自己を乗り越える」-。そして「礼」で終了した。
一連の体験を通して感じたのは、武道の基本や精神に則りつつも、フィットネスの楽しさをまぶすことで、敷居をなるべく低くしようとしている工夫だ。筆者のような武道未経験者にはありがたい。さらに、シャワールームにはボディソープやシャンプーなどが備えられ、ロッカールームには人気のドライヤーやアメニティを充実させるなど、女性視点ならではの施設の充実ぶりが目を引く。
女性視点で充実させたロッカールーム
そういえば、最近は個性的なフィットネスが増えているように感じられる。以前は、働き盛りの男性がメインターゲットだったフィットネスジムには、シニア層のユーザーが増えており、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)対策向けのプログラムも充実させているところも少なくない。成果にコミットするボディメイクジムや24時間営業のセルフ型ジムなど、新しいサービスや取り組みも進んでいる。
その意味では、B.I.Fに見られるように女性も大きなターゲットだ。筆者の友人も女性向けの小規模サーキットジムに通ったり、「腹筋女子」に目覚めてパーソナルトレーニングを始めたり。人目を気にせずに没頭できる暗闇系といわれる、クラブのような光と音響に満ちた部屋で自転車を漕いだり...。自分の好みにあったフィットネスが選べるのはうれしい。
こうした施設の多様化や各世代に広がる運動・健康意識の高まりを背景に、フィットネスクラブの市場規模は年々拡大している。日本生産性本部の「レジャー白書2018」によれば2017年4610億円(前年比2.9%増)に達し、4年連続で過去最高を更新した。各異業種からの新規参入もあり、この勢いはしばらく続きそうだ。
(写真)筆者 PENTAX K-50
B.I.F BY NERGY 原宿
住所 東都渋谷区神宮前4-31-12原宿ゼロゲート4F
公式サイト https://bif.jp/
竹内 典子