2019年11月22日
社会・生活
研究員
大塚 哲雄
「厳冬」か「暖冬」か―。間もなく2019年冬のボーナスシーズンがやって来る。各種調査によるボーナス見通しも出始めた。
日本経済団体連合会(経団連)が11月14日公表した1次集計によると、大手企業の冬のボーナスは前年比1.49%増を予測。ただし、最終集計では下振れの可能性もあると含みを残した。一方、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査(事業所規模5人以上)では、同0.4%減と4年ぶりに減少に転じるとの結果が出た。
そもそもデフレに悩まされた平成の30年間、家計の懐具合は「冬の時代」が続いていた。まず、平成の初めと終わりで一世帯当たりの可処分所得がどのくらい伸びたのか確認してみよう。可処分所得とは、給与などの収入から税金や社会保険料などを差し引いた「自由に使えるおカネ」のこと。1990年の月額44.1万円に対し、2000年は47.3万円と増加したものの、2018年は45.5万円に落ち込んだ。1990年と2018年を比べると、わずか3.2%しか伸びていない。
伸びているだけマシかと思われるかもしれないが、そうではない。1990年から2018年の間に消費者物価指数は11.1%上昇している。つまり、物価の上昇で家計に入るおカネの価値は目減りしているのだ。
こうなると支出の見直しを迫られるのは必然だ。しわ寄せはどこに及ぶのか。答えは総務省の家計調査から浮かび上がる。それによると、2018年の月額平均の家計支出合計は28万7315円で2000年に比べて3万13円減少、中でも小遣い・交際費関連は5万1548円が2万8909円と2万2639円も減った。
特にターゲットになりやすかったのが、お父さんの小遣いだろう。実際、新生銀行が2019年6月に発表した「サラリーマンのお小遣い調査」によると、2019年の男性会社員(20〜50代)の月額小遣いは、前年から3089円減って3万6747円となり、1979年の調査開始以降で過去2番目に低い結果となった(過去最低は1982年の3万4100円)。ちなみに1回の昼食代は555円、1カ月の飲み代は1万3175円だった。
あくまでも個人の感覚だが、平成の初めのころ、筆者の会社帰りの飲み代は1回3000円前後だった。それがいまや「千ベロ」「二千ベロ」(1000円や2000円で酔えること)で十分満足。低価格を売りにした飲み屋は同輩たちでいっぱいだ。財布の中身から逆算すると、そうでなければ気軽にのれんをくぐれないというのが実情だろう。
小遣い事情一つ取っても、「アベノミクスで景気拡大」などという政府のPRには、素直にうなずけない。事実、低成長にあえいだ平成の30年間で日本の経済的な地位は大きく低下、世界に占める日本のGDPの割合は1989年の15%から2000年には14%、2018年には6%へと大幅に縮小した。
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と持ち上げられていたのが、バブル経済の崩壊で一変、長く続いた景気低迷で「ジャパンパッシング」から「ジャパンナッシング」へと、日本経済の影響力も下り坂を転げ落ちた。昭和の終わりに社会人となった筆者の歩みは、日本経済の転落の歴史と軌を一にする。その原因を政府の経済政策に求めるのは簡単だが、時代を駆け抜けた企業戦士の一人として責任を感じるのも事実だ。
令和が本格的にスタートするにあたり、われわれ世代が次の令和世代に何を残し、何を引き継ぐのか。現役としての残り時間が少なくなる中、今一度気合いを入れ直し突っ走りたいと決意を固めている。せめて、次世代のお父さんの懐が少しでも暖かくなるような、そんな時代になってほしい。
お父さんの足取り(イメージ写真=東京・御茶ノ水)
(写真)筆者
大塚 哲雄