2016年12月13日
最先端技術
研究員
平林 佑太
この包装箱の特徴は、「逆台形」のデザインである。たくさん並べてみると、ノコギリの刃のよう見える。なぜこんな形状をしているのだろう?開発責任者の藤下卓也さん(現在は調達物流課長)に聞くと、「従来の大型包装箱と違って、これはわざと縦に置くと倒れるようにしているんです」という。
従来品は直方体であり、縦でも横でも置くことができた。ところが、縦にしたまま保管されると、ボトルの中のトナーが底に沈んでしまう。その結果、複写機本体へのボトルの装着がスムーズにいかなかったり、トナーの補給が難しくなったりという問題があった。
大容量トナーボトル製品の「逆台形」包装箱
そこで藤下さんのグループは発想を転換し、「縦に置いたら倒れてしまう包装箱」の開発に着手。ボトルを箱に入れて縦に置いた後、徐々に傾けるという実験を繰り返した。最終的に傾ける角度が101°を超えると、箱が倒れ始めることが分かった。それより角度を大きくすると、箱の材料が余計に必要になる。また「逆台形」にしたことで、上底と下底の寸法差から隙間が生まれ、それが輸送時の衝撃からボトルを保護するという効果も確認された。
図表:「逆台形」トナーボトル包装のイメージ
(出所)筆者作成
この包装箱を量産に漕ぎ着けるまで、開発から約1年を要した。試作品が出来上がるたびに、台車に載せて積載テストを何度も・・・。調達物流課の小野真一さんは「試作品の数は優に30回は超えました」と笑みを浮かべる。藤下課長は「包装材の設計段階から、われわれ物流会社がプロジェクトに参画したからこそ、画期的な商品を開発できました」と総括し、来年のコンテストで7年連続入賞を狙う。新製品の詳細はもちろん企業秘密。だが、二人の自信に満ちた眼差しから、勝算をひしひしと感じながら、帰りの新幹線に乗り込んだ。
リコーロジスティクス調達物流課
藤下卓也課長(左) 小野真一さん(右)
(写真)筆者 RICOH CX4
平林 佑太