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リース業で国内初、与信業務にAIを活用

=機械学習でデータ解析し、貸し倒れ率大幅低減目指す=

2018年01月25日

最先端技術

研究員
伊勢 剛

 人工知能(AI)技術のブームにまたもや火がついてから数年が経過した。ディープラーニング(深層学習)といった新技術によって、AIの可能性に拍車が掛かったのがそのきっかけだ。産業界もその技術に注目して、さまざまな業種で実用化が進んでいる。中でも金融業では、フィンテックと呼ばれる金融とICT(情報通信技術)を組み合わせて革新的な金融サービスを生み出す技術に注目が集まっている。

 リコーリースはリコーICT研究所(ICT研)と共同で「AI技術を活用する与信業務自動化」を開発、2018年1月から実用化することを発表した。これは日本国内で初めてリース業にAIを活用した応用例である※1。ICT研ではAI、特にコンピュータが自ら学習して予測したり、解を導き出したりする機械学習の技術を蓄積してきた。製造業向けに製品の欠陥を外観から自動で検査する機械学習アルゴリズムを開発し、欠陥検出精度を競う「外観検査アルゴリズムコンテスト」(主催・精密工学会画像応用技術専門委員会)で、2014年度と2015年度の2年連続で優秀賞を受賞するなど、高い評価を得ている。

 今回、その技術を金融の与信業務に応用したわけだ。ICT研の澤木太郎開発リーダーは「AI技術の応用先としてオフィス業務や製造業向けだけではなく、幅広い展開先を検討していた。そこで当時、フィンテックの具体的な事例が求められていた金融業に着目した」と語る。金融業では融資業務の効率化が求められており、リスク評価の分野でAI技術の活用が期待されている。「同じグループ内のリコーリースに機械学習による与信業務自動化を提案したものの、他のベンチャー企業をはじめとして、既に多くの提案がもたらされていた。その中でコンペ評価をした結果、採用が決まり共同開発が始まった」と、澤木氏は開発の経緯を振り返る。

 機械学習の精度を上げるカギは二つある。第一に学習データの数である。データは多ければ多いほどいい。リコーリースには月間3万件を超える与信件数がある。その大量のデータの中から、お客様の売上高や支払履歴、倒産情報などの企業情報や取引情報といった数百種類に上る「特徴量」を解析していくのだ。第二に適切な算式(学習器=学習アルゴリズム)の融合である。特に複数の学習アルゴリズムを融合させて一つのアルゴリズムを作り上げる「アンサンブル学習」といわれる手法がその根幹にある。

 その上で、どのようなデータとアルゴリズムを組み合わせるかによって、どこまで精度を上げられるかが決まる。試算した結果、従来のシステムと比較すると貸し倒れ(デフォルト)率が16%も低減することが分かった。

 まず、リコーリースは少額与信(月間1万1000件)からこのAIシステムを活用する。また、社内与信業務の自動化にとどまらず、業務に課題を抱えるお客様向けのサービス展開も視野に入れている。澤木氏は「リース業でのAI活用はまだこれからだ。精度の向上や適用業務の拡大などを今後検討していきたい。さらにリース業への適用にめどが立ったら、他の業種へのAI活用を考えたい」と展望を語る。さまざまな企業がこぞってAIの活用を競う中で、リコー発のAI技術が金融業を手始めに、他の業界にも広がっていくことを期待したい。

20180125.jpgリコーリース本社
(提供)リコーリース

リコーリース ニュースリリース

研究開発本部 技術紹介ページ


※1 対外発表資料をもとに筆者調べ

伊勢 剛

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