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さよなら!使い捨て電池

=リコー開発「軽くて自在に曲がる」次世代型太陽電池=

2021年12月10日

最先端技術

企画室
帯川 崇

 英国グラスゴーで国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が2021年11月13日まで開かれた。石炭火力発電の扱いをめぐる議論などが紛糾したとはいえ、参加各国が産業革命前に比べて気温上昇を1.5度に抑えるよう努力することで合意に至った意義は大きい。化石燃料への風当たりは一層強まり、再エネへの取り組みはいよいよ「待ったなし」となった。

 日本における再エネの中心は太陽光発電と言ってよいだろう。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、2020年時点で既に日本の太陽光発電量は中国、米国に次ぐ世界第3位であり、今後もさらなる発電量の増加が期待される。

設置場所をめぐる太陽光発電の問題

 だが残念なことに、太陽光発電設備を導入する国内の現場からは厳しい声が上がっている。特に大規模な発電の場合、日照の良い広い面積を求めて過疎地や山林に設置されるケースも多く、事態は深刻だ。

 設置場所の周辺住民からは、「草木が生い茂ってパネルに影を落とすと、発電量が極端に低下する」「急傾斜地に設置されると、草木の刈り取りやメンテナンス作業が大変だ」などといった声が聞かれ、「結果的には維持・管理を含めたコストが馬鹿にならない」との不満も少なくない。また、「むしろ森林伐採による保水力の低下など環境破壊につながっているように感じられる」とも指摘されるなど、「迷惑施設」並みに扱われるケースもあるという。

 ちなみに、現在主流のシリコン太陽電池の場合、メガソーラー発電といわれる1000キロワットの発電量(=一般家庭の200世帯分の電力使用量に相当)を得るためには、およそ3ヘクタールの広さ(=サッカーグラウンドの1.5倍)が必要とされる。もちろん日照や設置の条件により必要な面積は変わるが、いずれにせよ重くて大きい現在のシリコン太陽電池で大きな発電量を得るためには、広い設置面積が必要になる。

 このため、設置場所の制約を大きく解消してくれる「軽量でフレキシブルな」太陽電池の登場が待ち望まれている。ビルの外壁や窓に取り付けることができれば、広い土地がなくても十分な発電量が得られるからだ。

軽量でフレキシブルな次世代太陽電池が登場!

 こうした期待に応える可能性を秘めるのが、リコーが発表した軽量で自在に曲がる次世代太陽電池(=フレキシブル環境発電デバイス)。有機薄膜タイプの太陽電池であり、まずは各種事業者向けにサンプル提供を始めた。

 主な特徴は、①フィルム状のため軽い上、電池を曲げて曲面に貼り付けられる②屋内照明や日陰など微弱な光の下での効率的な発電を得意とする―などだ。リコーが「環境発電デバイス」と呼ぶように、普段利用されることのない太陽光や室内光といった環境下でエネルギーを収穫(ハーベスティング)し、電力を得る「エネルギーハーベスティング(=環境発電)」のコンセプトを具現化したものだ。

写真フレキシブル環境発電デバイス
(出所)リコーフューチャーズBU・EH事業センター

 具体的な応用先としては、充電レスヘッドホンやウエアラブル端末、インフラ・防災モニターなどが考えられる。つまり、電池交換なしで常時稼働を可能とする電子機器の自立型電源として活躍が期待されるのだ。例えば、トンネル内や橋梁の裏側など電池交換作業が容易でない場所でメンテナンス用のモニタリング機器に使えば、そのメリットは相当大きいはずだ。

 さらに将来は、フレキシブル環境発電デバイスの大面積化で発電効率の向上を図るだけでなく、透明化の実現によって外壁・窓で発電する創エネ分野への展開も見込まれる。リコーはまず小型の自立型電源からスタートし、技術開発を重ねることで大型の発電につなげていくシナリオを描いている。

フレキシブル環境発電デバイスの活用(イメージ図)
図表(出所)リコーフューチャーズBU・EH事業センター

ケーブルや電池交換が不要、快適な生活を実現

 筆者の周りを見渡すと、パソコンのマウスやキーボードなどで小型電源が利用されていることに気づく。こうした電子機器は無線化が進み、通常はケーブルレスで快適に使用できる。半面、電池交換が面倒だ。加えて、単三、単四、ボタン型など実にさまざまな種類があるため、いざ電池が切れるとあわてて引き出しを探す羽目に。一方、充電タイプであれば電池交換は不要だが、その代わりケーブルが必要となり、こちらもスマートとは言えない。

 このような小型の電子機器に今回のフレキシブル環境発電デバイスが搭載され、ケーブルレスで電池不要となれば日常生活はとても便利で快適になるはず。屋内照明光という、生活環境に必ず存在する「身近な光」をエネルギー源として活用するため、ユーザーは環境貢献への満足感を得ることもできる。無論、販売企業にとっては持続可能な開発目標(SDGs)への貢献をアピールできる商品となるだろう。そして近い将来、屋外での大規模発電に活用されると、危機に瀕した地球環境の救世主となる可能性を秘める。


【インタビュー】

フレキシブル環境発電デバイス、2022年度量産化へ
=リコーフューチャーズBU・EH事業センター 事業化担当・増原裕久氏 開発担当・新居遼太氏=

 今回、リコーが発表した軽くて自在に曲がる次世代太陽電池「フレキシブル環境発電デバイス」について、開発エピソードや将来展望などを開発、事業化それぞれのキーパーソンにインタビューを行った。

 ―「フレキシブル環境発電デバイス」の特徴と、従来の太陽電池との違いは。

 増原裕久氏 今回発表したものは、有機材料の特徴を活かした軽量フレキシブルな環境発電素子です。200ルクス程度の室内照明光から、日陰に相当する1万ルクス程度の半屋外まで、高い発電力が得られるという基本性能の高さが特徴。加えて、部分的な影による出力低下が少なく、フレキシブル性を活かしてさまざまな場所で利用いただけます。現在、2022年度量産化に向けて準備中です。

 ―直射日光が当たる屋外での利用は難しいのですか。

 新居遼太氏 屋根置きや自動車ルーフなど完全直射日光(=10万ルクス程度)の環境では、まだ実用レベルに到達していないと考えています。今後の改良が必要です。一方、ビル壁面や電柱などであれば、直射日光に常時さらされない限り、対応可能ではないかと思います。今後の検証課題です。

 ―屋内用途の場合、軽量フレキシブルのメリットは何ですか。

 増原氏 基板がガラスからフィルムに代わることによる具体的なメリットとしては、「落としても割れない」「圧倒的に軽い」「曲面にも設置できる」の3点が挙げられます。今後、こうしたメリットをお客様に訴求できる具体的な商品を展開していきます。

 ―自立型電源として使う場合、エネルギーを貯めておく充電機能が必要では。どれぐらいの時間の光照射で、どれぐらい暗所で使えるようになりますか。

 新居氏 ご指摘のように、フレキシブル環境発電デバイスの外に蓄電池を備える必要があります。暗所で使える期間はセンサーや機器の消費電力によるため一概に言えませんが、オフィス使用ならば12時間以上、屋外であれば16時間以上、暗所になっても使えるような設計が必要になると考えています。

 ―製造プロセスについてはどの程度進んでいますか。

 新居氏 量産技術は目下検討中です。現時点ではパネルの最大サイズは現状30センチ×30センチですが、将来は大型化が目標です。その際、シリコン製太陽電池と同等以下の製造コストを目指しています。

 ―技術開発で苦労した点は。

 新居氏 耐久性・信頼性を担保するところです。低~中照度まで特性を担保するための材料開発にかなり苦労しましたが、九州大学との共同研究により、よい材料を生み出すことができました。リコーだけでは成し得なかったことであり、オープンイノベーションの重要性を感じています。

 ―商品開発で苦労したところは。

 増原氏 太陽電池分野では開発競争が激しく、他社に対する優位性・独自性の打ち出しに苦労しました。さまざまな実験の結果、われわれのフレキシブル環境発電デバイスは低~中照度の環境下で、他の太陽電池と比べて優れた特性を持つことが分かりました。この結果から、最初のターゲットをIoT(モノのインターネット)デバイス用の自立電源に定めることができました。

 ―サンプル出荷開始という発表に対し、反響はありましたか。

 増原氏 今回のプレスリリースによって、われわれの想定を超えて幅広いお客様からお問い合わせを多数いただいており、アプリケーションが広がるのではないかと期待しています。

 ―今後、事業化を加速させるためには。

 新居氏 このフレキシブル環境発電デバイスを使ってお客様の困り事を解決するような提案をしていく必要があります。具体的には、発電デバイス単体の提案から、センサーや蓄電池などとの組み合わせまで提案を進めていきます。そのためには、事業パートナーとの連携が非常に重要になると考えています。

 ―最後に将来への意気込みを語ってください。

 増原氏 われわれが掲げているキーワードは「充電のない世界」です。つまり、環境発電素子によって充電という束縛から人間を解放していくことを目指します。フレキシブル環境発電デバイスと蓄電池と組み合わせることにより、配線の必要な充電をなくします。そして照明光などの未利用エネルギーを有効利用することで、無意識のうちにケーブルレス充電が完了する世界を目指していきます。

写真事業化担当の増原裕久氏(左)と開発担当の新居遼太氏(右)

帯川 崇

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