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経済安保の重要性増す「海底ケーブル」

=日本海側に敷設、「日本周回」目指す政府=

2022年02月15日

最先端技術

研究員
河内 康高

 電子メールやSNS、テレビ会議、動画・音楽視聴、ネットショッピング...。インターネットは今や、われわれの生活に欠かせないインフラだ。それによって生じる膨大なデータを運ぶのが、世界中に張りめぐらされた海底ケーブル網である。KDDIによると、世界全体で総延長約120万キロ(=地球全周の約30倍)が敷設され、国境を越える通信を日夜支えている。

写真国際通信を支える海底ケーブル(イメージ)
(出所)stock.adobe.com

 国境をまたいでネットワークを形成するインフラには、人工衛星を活用する衛星通信もある。しかし、海底ケーブルは通信速度でそれを圧倒する。海底ケーブルが日米間を約9000キロでつなぐのに対し、衛星通信は一般的にその約8倍もの長さを要するからだ。このため、国際通信の実に99%が海底ケーブルに依存する。

写真海底ケーブルの総延長は120万キロ(イメージ)
(出所)stock.adobe.com

 米中対立の激化やウクライナ情勢の緊迫化を背景に、海底ケーブルは経済安全保障の観点からも重要性を増す。岸田文雄首相は2021年12月、臨時国会の所信表明演説で、日本を周回する海底ケーブル「デジタル田園都市スーパーハイウェイ」を向こう3年程度で完成させると表明。日本中どこでも高速大容量のデジタルサービスを使えるようにすると公約した。

 これを受けて2022年1月17日、経済産業、総務両省が共同主宰する「デジタルインフラ(DC等)整備に関する有識者会合」が中間とりまとめを発表。海底ケーブル網の太平洋側集中を問題視した上で、日本海側などでの整備を支援する方針を打ち出した。海底敷設する民間事業者に対し、上限なしで事業費の80%を補助するという。

海底ケーブルの敷設構想
図表(注)DCはデータセンター、IXはインターネットエクスチェンジ
(出所)経済産業省

海底ケーブルめぐり米中が勢力争い

 サイバーセキュリティなどを専門とする土屋大洋(つちや・もとひろ)慶應義塾大学教授は自著で、主に米中間でサイバーグレートゲーム(=サイバー空間での勢力争い)が始まっており、「海底ケーブルが安全か、盗み見られていないか、クリーンかという問題は、今後のグローバリゼーションと情報社会の進展を左右する技術的・政策的課題である」と指摘する(「米中分断の虚実」日本経済新聞出版)。

 実際、米司法省は2020年6月、グーグルやフェイスブック(現メタ・プラットフォームズ)などが進めていた、ロサンゼルスと香港を結ぶ太平洋横断海底ケーブルの敷設計画に「待った」を掛けた。この海底ケーブルを流れる通信データを中国政府が香港で抜き取るのではないかと、同省は懸念したとみられる。続いて同年8月、ポンペオ国務長官(当時)が「クリーン・ネットワーク構想」を発表。海底ケーブルを含む5分野から中国製品を排除すると宣言し、同盟国にも賛同を求めた。

 南太平洋島しょ国のミクロネシア連邦、キリバス、ナウル共和国では、世界銀行主導でそれぞれを結ぶ海底ケーブルの敷設計画が進められていた。しかし、中国企業が入札を通じて事業に参加すれば安全保障上の脅威になると米国が警告を発し、事業はこう着状態に陥った。そして2021年12月、日本と米国、オーストラリアはこの事業に資金支援を行うと発表、南太平洋地域で存在感を増す中国に対抗する姿勢を鮮明にした(シドニー時事など)。

 海底ケーブルなくして、現代の情報通信ネットワークは機能しない。2022年1月15日、南太平洋の島国トンガでは、海底火山噴火の影響で海底ケーブルが切断され、外部との通信がほぼ遮断された。このため、救援活動や被害確認などに重大な支障を来している。災害大国・日本でも同様の状況に陥る可能性も否定できない。万一に備えて、バックアップとなる海底ケーブルの整備は喫緊の課題といえよう。

 さらに近い将来、クルマの自動運転や遠隔医療などの普及が本格化すると、データ通信量は飛躍的に増加する。高速・大容量の通信を支える海底ケーブルの重要性が一段と高まるのは必至だ。最大水深8000メートルに設置されるという海底ケーブルを、われわれが普段目にすることはない。だが、生活に不可欠な「縁の下の力持ち」なのだ。

河内 康高

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