3DPエキスパート

3D CADと3Dプリンターにより変わる設計の現場

コラム
3D CADと3Dプリンターにより変わる設計の現場

3D CADと3Dプリンターは設計には欠かせないツールとなってきている。3D CADの歴史や概要を説明すると共に、3D CAD、3Dプリンターの新たな活用シーンなどを解説する。

2D CADから3D CADへ

CADを使って設計を行うのが当たり前の現代ですが、世界で最初のCADが発表されたのは今から50年以上前の話。1950年代にアメリカで軍事用途での研究が始まり、1963年にマサチューセッツ工科大学のアイバン・サザランド博士らにより発表された「Sketchpad」が世界で最初のCADと言われています。1990年代になると、PCの処理能力向上により、個人レベルで使用が可能な3D CADが登場してきます。

2D CADはペンと定規で紙の上に図面を描くことと基本的な目的は同じでした。そのため、平面図から3Dモデルを想像しながら設計するという熟練の技が必要となります。3D CADは、仮想の3次元空間上に実際の形と同等の形状をモデリングして設計を行います。全体を確認しながら設計出来るので、経験の少ない若手でも構造を簡単に理解して設計することが可能です。設計に対する習熟も早くなるので、短期間で熟練の設計者と同じ知識を身に着けられるだけでなく、熟練の設計者とのコミュニケーションもスムーズになります。また、平面の図面を読み解くことのできない営業担当の者でも、直感的に製品全体を理解することができるので、営業ツールとしても大いに役に立ちます。3D CADは設計ツールとしてだけでなく、コミュニケーションツールとしても利用できます。また近年は、3Dプリンターにより3D CADで作成した3Dデータを造形することで、短時間かつ低コストの試作開発まで行えるようになりました。3D CADでバーチャルにテストをすることだけでなく、3Dデータから実際に形になった物を手に取り確認をすることができるようになったのです。

他にも、3D CADや3Dプリンターは、製品の設計、製造現場に限らず、建築の現場でも大いに活用され始めています。建築物の強度や光、風の影響を3D CAD上でシミュレーションすることは今では広く行われています。更に近年では、3Dプリンターを用いた建築模型の製作も徐々に行われるようになってきました。例えば、展示会やショールームに展示する建築物の完成イメージ模型や、プレゼン時の見本模型、工事段取りの打合せなどのための構造模型等、様々な用途の建築模型製作に活用されています。このように、3D CADと3Dプリンターはこれからの設計、製造現場にはなくてはならないものといえます。

3Dプリンターで造形するために必要な3D CADの機能

3D CADソフトウェアは既に多くのものがリリースされていて、オープンソースのものやフリーで使用出来るものもあります。代表的なソフトウェアとしては、オードデスク株式会社のAutodesk InventorやFusion 360、ソリッドワークス・ジャパン株式会社のSolidWorks、富士通株式会社のICAD/MXなどが挙げられます。Autodesk Inventorは大規模な機械設計にも対応する高機能な3D CAD。Fusion 360はクラウドをベースとしており、個人での利用やスタートアップの利用ならば条件を満たせば無償で利用可能です。SolidWorksは優れた操作性と豊富な機能を備え、世界で高いシェアを得ています。ICAD/MXは2次元から3次元設計への移行を容易にする混在設計環境に対応しています。

3D CADによる3Dデータの表現方法は、大きく分けて「ワイヤーフレーム」、「サーフェス」、「ソリッド」の3種類あります。ワイヤーフレームは線だけで3Dデータが描かれる方法。サーフェスは線で囲まれている閉じた領域を面として、面で囲むことで3Dデータを描く方法。ソリッドは、面だけでなく内部情報まで持って3Dデータを描く方法。近年の3D CADでは、多くのソフトウェアでこれらの表現方法を相互に互換できる機能を備えていて、それぞれの表現方法の特徴を活かしながら使い分けて3Dデータが作成されていきます。
例えば、ワイヤーフレームは、初期の3D CADに多く用いられていた方法で、データ量が少ないため表示速度が速いという特徴があります。現在でも基本的な構造を考える際などに用いられる事が多くあります。サーフェスは、曲面を多く持つような複雑な形状を作るのに適しているので、車の車体や家電製品のデザインなどに多く用いられています。ソリッドでは、内部の情報があるので、質量や体積など各種の構造解析や、干渉のチェックなどを行うことが可能です。また、出来上がった3Dデータを3Dプリンターで造形する場合には、ソリッドで作成されたデータでなければならないので、ワイヤーフレームやサーフェスのデータも多くの場合ソリッドに変換されて用いられています。
ソリッドで作成された3Dデータを、3Dプリンターで造形するためには、STL形式と呼ばれる3Dデータ形式に変換する必要があります。STL形式は、3Dデータの形状を小さな三角形(ポリゴン)の集まりで表現する方式です。最新の3D CADソフトウェアならばほとんどのソフトウェアがSTL形式でのデータ出力に対応していますが、非対応の古いソフトウェアの場合は、別途変換用のソフトウェアを用意する必要があります。

もし、STL形式でのデータ出力に非対応のソフトウェアであったり、ソリッドでの3Dデータが作成できないソフトウェアであったりした時は、新規にソフトウェアを準備する以外に3Dデータ作成サービスを利用するという方法があります。リコーの3Dプリンター出力サービスでは、お客様からお預かりした3Dデータをもとに、熟練の技術者が造形物を3Dプリンターで造形してお届けするサービスを提供しています。3Dデータの変換だけでなく、2DCADのデータや古い図面の画像データ(JPEGやPDFなど)、紙図面から3Dモデリングを行う3Dデータ作成サービスも3Dプリントのオプションとして提供しています。今まで古い資産しかなく、3Dプリンターの利用をあきらめていた方も、一度検討して利用してみると設計に対する考え方が大きく変わるきっかけとなるかもしれません。

ライタープロフィール

Why RICOH 
(リコーだからできる事)

リコーは3Dプリンターをものづくりの現場で20年以上にわたって活用してきました。 製品の試作に始まり治具製造、さらには最終製品製造へと適用範囲を広げております。 2014年以降、自社で蓄積してきたノウハウを活かして 3Dプリンターの販売や3Dプリンター出力サービスを提供しております。

3Dプリンター出力サービスでは、お客様のご要望やご予算に合わせて 最適な造形材料・造形方式・後加工などをご提案しています。 従来の加工方法(切削/射出成型など)とは異なる、 3Dプリントの特性を最大限に活かした造形を丁寧にご支援します。

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