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住宅を3Dプリンターで造形する

コラム
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住宅を3Dプリンターで造形する

世界中で建築物を3Dプリンターでつくる取り組みが始まっています。材料はセメント系の材料が用いられることが多く、米国では一日で小規模住宅を作る装置や従来建築方法と比較して建設費50%削減、10倍の早さで完成するなど革新的な取り組みが始まっています。日本では建築基準法などの関連法規が対応していない工法ということもあって、すぐに活用がすすむわけではありませんが、建築・住宅の作業者の確保が深刻化する中で、今後の活躍の可能性は非常に大きい分野です。住宅用3Dプリンターの方式や特徴を解説しながら、今後の可能性を考えていきたいと思います。

住宅用3Dプリンターとは

そもそも住宅用の3Dプリンターとはどのようなものでしょうか。まだ発展段階にあるため様々な種類がありますが、大きく分けると「現地生コン押し出し方式」、「現地ブロック積み上げ方式」、「工場内大型3Dプリンター方式」の3つになります。

現地生コン押し出し方式

現地生コン押し出し方式は、材料に特殊な生コンクリートを使い、ケーキをデコレーションするように建築物を一筆書きにしながら造形していきます。3Dプリンター自体に車輪がついており、移動しながら現地で生コンクリートを材料にした建築物を造形していきます。多くの場合で、補強のために鉄筋を人が設置していくため、完全に無人で造形できるわけではありません。

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現地ブロック積み上げ方式

現地ブロック積み上げ方式は、事前にレンガ状の材料を工場で生産した後に、建築用3Dプリンターが現地で積み上げていく方式です。ブロックを搬送するベルトコンベアとロボットハンドが一体化した構造をもっており、ロボットハンドが移動しながらレンガを積み上げていきます。

工場内3Dプリンター活用方式

工場内大型3Dプリンター方式は、従来の「プレハブ工法」の延長線上にあります。工場内で従来工法により外壁や支柱を作り、内装などを3Dプリンターで造形して現地で建築をすることで、工場で仕入れ部材の減少、現地での建築作業を減少させる等のメリットがありコストダウンが図れます。上記2方式と異なり住宅や建築物に対する既存法令と抵触せず、内製化を図りながら短納期で対応できる住宅パッケージとして用意でき取り組みやすい方式です。

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こうした工法の違いはありますが、3Dプリンターを使った住宅は、いずれも工期を短縮し、コストを劇的に下げることを狙っています。もっとも大きなコスト削減の要素は自動化による工期圧縮と代替素材の活用です。

どんな課題を解決できるか

住宅は様々な材料を、複数の工程で専門職人が、建築する現場で組み立てる出張加工を伴う作業です。工事には一定の期間が必要ですし、専門職をその期間拘束するので、当然費用はかさみます。3Dプリンターが工期を圧縮し、住宅を安価で手軽な存在にしてくれるとしたら、日本でもさまざまな課題が解決できる可能性があります。いくつか例を挙げてみていきましょう。

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安価に個々人の住宅ニーズを充足できる

住宅部材を工場で生産して現地で組み立てる、プレハブ住宅は、工期の短縮でき、コスト削減、均一な品質の施工ができるとQCDでのメリットは大きく日本でも多く建築されています。しかし、設計の自由度が低い(規格品住宅)、職人の技術力が生かしにくいといった課題もあります。新興住宅街、美しい新築住宅が立ち並ぶなか、ほぼ同じ形の家が並ぶ街並みをご覧になることがあると思います。設計の自由度を保ちながらQCDのメリットを享受できる点で3Dプリンターのよる自分だけの家づくりは欧米を中心に期待を集めています。

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被災時の簡易住宅

日本でも災害時の避難所暮らしが大きな問題になりました。東日本大震災などの大規模災害はいつ発生するか正確な予測ができない上に、実際に発生すると住宅を失い避難所生活を強いられる人々が大量に発生します。被災者の生活再建の足掛かりになるのが住宅ですが、簡易住宅を既存工法で用意しようとすると、数か月単位の時間がかかります。3Dプリンターで住宅を用意できれば、健康面で問題がある人や、小さな子供がいる家族を優先して毎日少しずつ避難所を改善していく事ができます。

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住宅困難者への住宅提供

世界に目を向けてみると、劣悪な住環境にある難民やホームレスを支援するための公共住宅として3Dプリンター製の住宅の活用が検討されている事例もあります。新興国では、急速な人口拡大で農村部から職を求めて都市部に人口が流入し、都市部で住環境が悪化することにより、ホームレスがブルーシート製のテントを張って生活しているケースも散見されます。ホームレスを救済することは、公共福祉の観点でも評価されるべき取り組みですが、治安の改善にもつながる施策でもあります。行政主導の取り組みとして簡易住宅を3Dプリンターで建築していく取り組みは今後世界中で進んでいくかもしれません。

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導入の課題

多くのメリットや可能性がある住宅分野への3Dプリンター活用ですが、建造物としての強度がどの程度発揮できるか、寿命がどの程度期待できるかなど不透明な点も多い状態です。また新しい工法であるため、日本では建築基準法が、3Dプリンター建築に対応しておらず、9平米未満の建造物は小屋という扱いで建てることができますが、それ以上の建物の建築には利用できない状況です。2025年の大阪万博では3Dプリンター建築のパビリオンが出展するべく現在調整が進んでいるということですが、今後の法制度側の対応に注目が集まるところです。

Why RICOH 
(リコーだからできる事)

リコーは3Dプリンターをものづくりの現場で20年以上にわたって活用してきました。 製品の試作に始まり治具製造、さらには最終製品製造へと適用範囲を広げております。 2014年以降、自社で蓄積してきたノウハウを活かして 3Dプリンターの販売や3Dプリンター出力サービスを提供しております。

3Dプリンター出力サービスでは、お客様のご要望やご予算に合わせて 最適な造形材料・造形方式・後加工などをご提案しています。 従来の加工方法(切削/射出成型など)とは異なる、 3Dプリントの特性を最大限に活かした造形を丁寧にご支援します。

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